英国のバス・バリトン歌手ブリン・ターフェル(Bryn Terfel)がイングリッシュ・ナショナル・オペラ(ENO=English National Opera)支援の嘆願活動を始めた。イングリッシュ・ナショナル・オペラは先日発表された英国の文化予算削減策の中で、予算の配分を行っているアーツカウンシル・イングランドの配分リストから外され、今後の活動に暗雲が漂っている。
嘆願書はデジタル・文化・メディア・スポーツ担当大臣に宛てられたもの。「私たちは政府に対し、ENOをアーツカウンシル・イングランドのナショナル・ポートフォリオ団体から外すことを根本的に考え直すよう求めます」としている。
ENOはすべての作品を英語で上演しているオペラ・カンパニー。1968年に本拠地をロンドン・コロシアムに移し、1974年から現在の名称を使って活動を続けてきた。チケット価格も低く抑え、どの作品も手話付き上演が必ず一回組み込まれるなど、オペラへの敷居を低くしようとする姿勢で知られてきた。
嘆願書の中でターフェルは、ENOが92年以上にわたり、35歳以下の観客、初めてオペラを観る観客、21歳以下の観客に無料チケットを提供してきたこと、ENOの観客の11パーセントが多様な民族であることなど、これまでの実績を挙げ、「ENOはすべての人のためのオペラです」と強調している。
先日発表された文化予算の大幅削減策の中で、ENOについては、これまで配分されていた年間1,260万ポンド(約21億円)の打ち切りが決まった。代わりに3年間で1,700万ポンド(約28億3,600万円)の一時金を受け取りって拠点をマンチェスターに移し、新しいビジネスモデルの開発を模索することが求められている。
ただ、ENOのハリー・ブリュンジース会長は8日、議会の全党議員連盟に対して「マンチェスターへの移転について多くの議論がなされていますが、我々はすぐにそれを白紙に戻さなければなりません。移転はない」と通告、移転を求められた場合、ENOを4月に閉鎖することを明らかにした。また、閉鎖によって「ロンドンから、才能があり、献身的で、能力のある人たちの雇用を、全部門にわたって600人失うことになる」と強調している。
写真:English National Opera / London Coliseum
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ロンドン発 〓 ブリン・ターフェルがイングリッシュ・ナショナル・オペラ存続のための嘆願活動
2022/11/24
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