ロンドン発 〓 英国政府が文化予算に大なた、イングリッシュ・ナショナル・オペラは年度予算の配分が打ち切られ、活動継続の危機に

2022/11/07
【最終更新日】2023/12/06

英国が文化予算の大削減に踏み切り、音楽界に大きな衝撃が走っている。中でも、ロンドンを拠点とするイングリッシュ・ナショナル・オペラ(English National Opera)は年度予算の配分が打ち切られ、3年分の一時金を受け取るだけとなった。“都落ち”だけでなく、すべての作品を英語で上演するといったこれまでのような活動が継続できるのか危惧されている。

文化予算の大削減は3日に発表されたもの。英国では政府の文化予算の配分を「アーツ・カウンシル」が行っており、今回の予算削減で中核の「アーツ・カウンシル・イングランド」への配分が5000万ポンド(約83億4,028万円)以上削減されるという大なたが振るわれた。

例えば、ロイヤル・オペラで10%減、ロンドン交響楽団やロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、フィルハーモニア管弦楽団が12%減、グラインドボーン音楽祭に至っては50%減といった具合で、多くの団体、音楽家が抗議声明を出す騒ぎになっている。

中でも、イングリッシュ・ナショナル・オペラはこれまで配分されていた年間1,260万ポンド(約21億円)の打ち切りが決まり、それに代わって一時金である「新しいビジネスモデルの開発のための資金を」3年間で1,700万ポンド(約28億3,600万円)受け取るだけ、という過去最大の危機に直面した。

イングリッシュ・ナショナル・オペラは、すべての作品を英語で上演しているオペラ・カンパニー。1968年に本拠地をロンドン・コロシアムに移し、1974年から現在の名称を使って活動を続けてきた。チケット価格も低く抑え、どの作品も手話付き上演が必ず一回組み込まれるなど、オペラへの敷居を低くしようとする姿勢で知られてきた。

オペラ側は「ロンドン以外の新しい拠点、潜在的にはマンチェスターを作ることで、全国的なプレゼンスを高めることができるようになるでしょう。ロンドン・コロシアムは、商業施設として最大限に活用しながら、オペラやダンスの上演に活用する予定」と、業態転換に将来を見出そうとしている。

ただ、マンチェスターに移った後は、ツーリング・オペラ・カンパニー的な活動に転換せざるを得ない、とみる向きもある。また、大規模なリストラは必至で、4日の《トスカ》のカーテンコールでは、劇場のソリストたちが揃いの「Choose Opera」のTシャツを着て登場、抗議の声を上げた。

一方、シリーズ物の継続も危ぶまれている。2021/2022シーズンからニューヨークのメトロポリタン歌劇場との共同制作で上演がスタートしたワーグナーの楽劇《ニーベルングの指環》全4部作もその一つ。リチャード・ジョーンズ演出で、第1弾の《ワルキューレ》に続いて、2022/2023シーズンは《ラインの黄金》が登場することになっている。

写真:English National Opera


関連記事

  1. ザールブリュッケン発 〓 マックス・オフュルス映画祭の音楽賞にダーシャ・ダウエンハウアー

  2. ミュンヘン発 〓 パーヴォル・ブレスリクにバイエルン州から「宮廷歌手」の称号

  3. アムステルダム発 〓 オランダも8月いっぱいイベント禁止、オランダ芸術祭も中止

  4. フィレンツェ発 〓 新型コロナウイルスの感染拡大めぐり、チョン・ミョンフンも降板

  5. ミラノ発 〓 ミラノ市長がスカラ座にゲルギエフの解任を要求、ロシアのウクライナ進攻で

  6. ウィーン発 〓 ネトレプコがロシアのウクライナ侵略に反対、プーチン大統領との関係を否定する声明

  7. コペンハーゲン発 〓 デンマークも劇場閉鎖

  8. ベルリン発 〓 ドイツは4月19日までの公演をキャンセル、州立歌劇場の音楽祭「フェストターゲ」は中止

  9. ワシントン発 〓 トランプ大統領が「トランプ・ケネディ・センター」の閉鎖、リノベーションを突然宣言

  10. ベルリン発 〓 州立オペラが2023/2024シーズンの公演ラインナップを発表、バレンボイムの後任は発表されず

  11. ベルゲン発 〓 第17回「グリーグ国際ピアノ・コンクール」で石井楓子が第1位に

  12. ウィーン発 〓 シェーンブルン宮殿のサマー・ナイト・コンサートを9月に延期、ウィーン・フィル

  13. 上演発 〓 バイロイト音楽祭、中国へ引っ越し公演

  14. サンフランシスコ発 〓 サンフランシスコ・オペラが2020/2021シーズンの公演ラインナップを発表

  15. シドニー発 〓 海辺のテラス・レストランに急降下するカモメ対策にパトロール犬

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. 2022年 11月 13日