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オペラやコンサート、いわゆる、クラシック音楽を中心に据えた音楽祭は世界中にどれくらいあるのか。2010年に刊行した『絶対行きたい 世界の音楽祭』の新版を書くため、インターネットで改めてそれを調べ直したのです。すると、どうでしょう。予想を超えて、その数がどんどん積み上がっていきました。その数、ここに情報があるだけで600超、です。

ところが……。世界にそれだけの数があるにもかかわらず、それらを一気に総覧するポータルサイトが英語圏にもないのです、つまり、この世界にない、ということです。それがこのWEBサイト「月刊音楽祭 / Around the Music Festival」を起ち上げようと思った最大の理由です。

欧米のオペラハウスやオーケストラの、音楽シーズンはたいてい9月に幕を開け、夏前の6月末に幕を閉じます。そして、次のシーズンの幕が開くまでの夏の時期、オーケストラは活動の場を音楽祭に移します。例えば、オーケストラ界の最高峰ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団はザルツブルク音楽祭のレジデント・オーケストラを務めます。ザルツブルク音楽祭が「世界最高の音楽祭」といわれるのも、それあってのことなのです。

一言で音楽祭と言っても、ドイツ・バイロイトで開かれているバイロイト(ワーグナー)音楽祭のような、チケットを取ること自体が至難の業という敷居の高いところもあれば、タキシードにブラック・タイでないと様にならないという格式の高いものから、プラッと立ち寄れる気軽なものまでスタイルもさまざまです。

音楽情報誌の編集長という仕事をやっていたこともあり、これまで世界的な音楽祭や公演に数多く足を運んできました。その多くが公演の取材やインタビューのための、“ただの往復”でしたが、それでも現地で足を運んだ公演からどれだけ感動をもらったか。その感動が思い出されて、いまでも胸を熱くすることがたくさんあります。

「音楽。それは旅の、そして人生のスパイス」。WEBサイトのタイトルに、そう掲げました。旅先で素晴らしい音楽に出逢う。それだけで、旅自体がずっと楽しいものにもなるでしょう。その経験はまた、人生にとって忘れ難い、プライスレスな思い出になるはずです。「月刊音楽祭」があなたの、音楽祭への旅のゲートウエイになってくれたら、そんな想いできょうも記事を書いています。

株式会社クラシック・ファースト代表取締役
「月刊音楽祭」編集長
田中良幸



■ たなか・よしゆき
1962年(昭和37年)、福井県鯖江市生まれ。高校卒業後、福井県職員として奉職するが1年で退職、愛知学院大学に進む。 在学中の86~88年に中国・北京大学に留学、帰国後は母校に戻り、大学院で研鑽を積む。90年、産経新聞社入社。記者として川崎支局、横浜総局を経て編集局社会部に移り、主に皇室を担当した。96年に文化部に異動してクラシック音楽の担当となり、97年には月刊のクラシック音楽情報誌『モーストリー・クラシック』を創刊、2005年まで初代編集長を務めた。06年、退社して独立。音楽プロデューサーとして活動し、06年から出光興産主催のコンサートシリーズ「ミュージック・イン・ミュージアム」を毎年手がけてきた他、08年にはパリ国立オペラの初の日本公演のプロモーションを手がけた。また、新聞社時代から衛星放送の音楽番組などの司会を務め、07〜09年にはラジオ日本のトーク番組「クラシック・ファースト」のパーソナリティーを務めた。09年に病を得て拠点を郷里の鯖江に移し、10年にはヤマハ・ミュージックメディアから『世界の音楽祭』を出版。最近は「街角ジャーナリスト」の肩書きで、時事問題の解説などで講演、執筆活動を展開。また、18年から福井放送のラジオ番組「田中編集長のサントラ大作戦」のパーソナリティーを務めている。