ロンドン発 〓 ブリン・ターフェルがイングリッシュ・ナショナル・オペラ存続のための嘆願活動

2022/11/24

英国のバス・バリトン歌手ブリン・ターフェル(Bryn Terfel)がイングリッシュ・ナショナル・オペラ(ENO=English National Opera)支援の嘆願活動を始めた。イングリッシュ・ナショナル・オペラは先日発表された英国の文化予算削減策の中で、予算の配分を行っているアーツカウンシル・イングランドの配分リストから外され、今後の活動に暗雲が漂っている。

嘆願書はデジタル・文化・メディア・スポーツ担当大臣に宛てられたもの。「私たちは政府に対し、ENOをアーツカウンシル・イングランドのナショナル・ポートフォリオ団体から外すことを根本的に考え直すよう求めます」としている。

ENOはすべての作品を英語で上演しているオペラ・カンパニー。1968年に本拠地をロンドン・コロシアムに移し、1974年から現在の名称を使って活動を続けてきた。チケット価格も低く抑え、どの作品も手話付き上演が必ず一回組み込まれるなど、オペラへの敷居を低くしようとする姿勢で知られてきた。

嘆願書の中でターフェルは、ENOが92年以上にわたり、35歳以下の観客、初めてオペラを観る観客、21歳以下の観客に無料チケットを提供してきたこと、ENOの観客の11パーセントが多様な民族であることなど、これまでの実績を挙げ、「ENOはすべての人のためのオペラです」と強調している。

先日発表された文化予算の大幅削減策の中で、ENOについては、これまで配分されていた年間1,260万ポンド(約21億円)の打ち切りが決まった。代わりに3年間で1,700万ポンド(約28億3,600万円)の一時金を受け取りって拠点をマンチェスターに移し、新しいビジネスモデルの開発を模索することが求められている。

ただ、ENOのハリー・ブリュンジース会長は8日、議会の全党議員連盟に対して「マンチェスターへの移転について多くの議論がなされていますが、我々はすぐにそれを白紙に戻さなければなりません。移転はない」と通告、移転を求められた場合、ENOを4月に閉鎖することを明らかにした。また、閉鎖によって「ロンドンから、才能があり、献身的で、能力のある人たちの雇用を、全部門にわたって600人失うことになる」と強調している。

写真:English National Opera / London Coliseum


  もっと詳しく ▷


関連記事

  1. ペルミ発 〓 クルレンツィス&ムジカ・エテルナのベートーヴェン交響曲第1弾が登場

  2. ロンドン発 〓 指揮者のラトルが新型コロナに感染、ロンドン響の指揮をキャンセル

  3. 東京発 〓 東京都交響楽団が音楽監督の大野和士との契約を延長

  4. ベルリン発 〓 ドイツは4月19日までの公演をキャンセル、州立歌劇場の音楽祭「フェストターゲ」は中止

  5. パリ発 〓 「France Musique」が年末年始、パリ国立オペラによるワーグナー《ニーベルングの指環》4部作をストリーミング配信

  6. ベルリン発 〓 ベルリン・シュターツカペレが無料の“出前コンサート”

  7. インスブルック発 〓 チロル交響楽団の首席指揮者に英国の若手指揮者ケレム・ハサン

  8. ロンドン発 〓 英国の劇場やホールも閉鎖、公演もすべてキャンセル

  9. 訃報 〓 レオン・フライシャー(92)米国のピアニスト

  10. フィレンツェ発 〓 ジェームズ・レヴァインの現場復帰がお預けに

  11. ウィーン発 〓 2023年の「ニューイヤー・コンサート」のプログラム発表、なんと15曲中14曲が初出、少女合唱団の初共演も話題

  12. ミュンヘン発 〓 ヤンソンス追悼演奏会はメータが指揮

  13. 訃報 〓 ハリー・クプファー(84)ドイツの演出家

  14. アーヘン発 〓 市立劇場がカラヤンの胸像をホワイエから撤去

  15. ミラノ発 〓 スカラ座が2024/2025シーズンの公演ラインナップを発表

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。