リューベック発 〓 クラリネットのサビーネ・マイヤーが来年で引退

2024/07/25

ドイツのクラリネット奏者サビーネ・マイヤー(Sabine Meyer)が来年で引退することを明らかにした。1981年の「ベルリン・フィル入団騒動」で有名になったことで著名なオーケストラ、演奏家と共演を重ね、結果的に世界で最も有名なクラリネット奏者となった。室内楽の演奏、録音にも積極的に取り組み、モーツァルトやウェーバーの解釈で高い評価を得ている。

マイヤーはバーデン=ヴュルテンベルク州クライルスハイム生まれの65歳。少女時代から兄のヴォルフガング・マイヤーとい一緒にクラリネット奏者の父親から手ほどきを受け、長じてシュトゥットガルト音楽院で学んだ。1979年の「ドイツ音楽コンクール」で第2位を獲得、バイエルン放送交響楽団に入団した。

1981年1月、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者のオーディションを受けた際、芸術監督兼終身指揮者だったヘルベルト・フォン・カラヤンに高く評価され、カラヤンが初の女性団員として入団を強く求めたが、「マイヤーの音には、当団の管楽器奏者にとって不可欠の、厚みと融合性が欠如している」という楽団員側と対立したことで、一躍その名が知られた。

その後、マイヤーの仮採用を決める楽団員の投票がないまま、カラヤンが米国公演に客員首席クラリネット奏者として帯同したことで対立は激化。1982年秋の楽団員全員による投票で仮採用が否決されるとカラヤンは激怒。黄金時代を極めていた両者の間には大きな溝が生まれ、それから7年後の1989年4月24日、カラヤンが健康上の理由で芸術監督と終身指揮者を辞任するという結末を迎えた。

マイヤーはトラブルを受けて、自分から入団を辞退。その後、フリーの奏者として活動を再開させ、ソリスト、室内楽で活躍。また、1993年からリューベック音楽大学の教授を30年にわたって務めるなど、幅広いキャリアを積んでいる。

写真:scholzshootspeople


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