訃報 〓 アンドレ・ワッツ(77)米国のピアニスト

2023/07/14

ピアニストのアンドレ・ワッツ(André Watts)が13日に亡くなった。77歳だった。指揮者のレナード・バーンスタインに見出され、十代から第一線で活躍。チャリティ演奏会やエイズ基金などへの助力など社会的活動も積極的に取り組んだ米国を代表するピアニストの一人。

ドイツ・ニュルンベルクの生まれ。父は西ドイツ駐留の米国軍人、母親が亡命ハンガリー人の家庭に育ち、1954年に渡米してフィラデルフィア音楽院で学んだ。9歳だった1955年にフィラデルフィア管弦楽団と共演するなど、早くから才能を注目された。

1963年、バーンスタインがニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団の青少年コンサートに起用、コンサートは全米にテレビ放映されて注目を集めた。その2週間後、再びバーンスタインが急きょ病気で出演できなくなったグレン・グールドの代役に抜擢、リストのピアノ協奏曲第1番を弾いて一躍時の人となった。

その後、ボルティモアのピーボディ音楽院に入学、レオン・フライシャーの薫陶を受け、1966年のヨーロッパ・デビューを機に本格的な演奏活動に入り、高度なテクニックに支えられた透き通った硬質のタッチで多くのファンを獲得、リストの他、ブラームス、ラフマニノフを得意としてきた。

また、1973年にバークシャー音楽センターで初めて教鞭を執って以来、後進の指導にも積極的に取り組み、全米のさまざまな大学から名誉博士号を授与されており、2011年からはインディアナ大学ジェイコブス音楽院でピアノの教授を務めていた。

テレビ出演も多く、2000年にはフィラデルフィア管の100周年記念ガラ・コンサートの演奏が米国、ヨーロッパ全土にテレビ放映された。社会的な活動にも積極的に参加、1988年のエイヴリー・フィッシャー賞など受賞多数。2011年にはアメリカ国民芸術勲章(National Medal of Arts)を授与されている。

写真:KAJIMOTO





関連記事

  1. シカゴ発 〓 ムーティとシカゴ交響が来年も全米ツアー

  2. クリーブランド発 〓 フランツ・ウェルザー=メストがクリーブランド管との契約を延長

  3. 訃報 〓 タマーラ・ミラシキーナ(89)ロシアのソプラノ歌手

  4. ワシントン発 〓 ナショナル交響楽団が中国公演を中止

  5. サンフランシスコ発 〓 サンフランシスコ響が2020年のすべての公演をキャンセル

  6. ニューヨーク発 〓 メトロポリタン歌劇場が“Nightly Met Opera Streams”の第9週のラインナップ発表

  7. ニューヨーク発 〓 テノールのステファン・グールドが健康上の理由で引退を表明

  8. 訃報 〓 アントニオ・メネセス(66)ブラジルのチェロ奏者

  9. シカゴ発 〓 ムーティーがシカゴ響の音楽監督退任を示唆

  10. ワシントン発 〓 ナショナル・オペラが2020/2021シーズンの公演ラインナップを発表

  11. フィラデルフィア発 〓 ピアニストのゲイリー・グラフマンがカーティス音楽院を退任

  12. 訃報 〓 ジェシー・ノーマン(74)米国のソプラノ歌手

  13. ネイプルズ発 〓 ウィーン・フィルの米国ツアー、二人目の代役指揮者はデイヴィッド・ロバートソン

  14. シカゴ発 〓 米国の音楽サイトがシカゴ響の次期音楽監督を予想、マリン・オールソップら6人の名前

  15. 訃報 〓 ヴィルジニア・ゼアーニ(97)ルーマニア出身のソプラノ歌手

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。