訃報 〓 マリア・ユーイング(71)アメリカのメゾ・ソプラノ歌手

2022/01/12
【最終更新日】2023/02/06

ソプラノ、メゾ・ソプラノ歌手として活躍したマリア・ユーイング(Maria Ewing)が1月9日、生まれ故郷の米国デトロイトで亡くなった。71歳だった。著名な歌劇場で活躍、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの創設者で演出家のピーター・ホールと一時期結婚しており、夫妻の娘はハリウッド女優のレベッカ・ホール。

ユーイングは1950年、デトロイトの生まれ。父親がスー族のネイティブ・アメリカン、母親はオランダ人という家庭で育ち、クリーブランドとニューヨークで声楽を学び、1973年にシカゴ郊外で行われている夏の音楽祭「ラヴィニア音楽祭」で歌手デビューを果たした。

メトロポリタン歌劇場デビューは1976年で、音楽監督のジェームズ・レヴァインに見出されてモーツァルト《フィガロの結婚》のケルビーノを歌っている。以降、1997年のベルク《ヴォツェック》まで96回出演している。

1978年には英国グラインドボーン音楽祭に出演。そこでホールに出逢い、二人は1982年に結婚した。夫妻は1990年の離婚まで、《カルメン》や《フィガロの結婚》などで共演。1988年のロイヤル・オペラの《サロメ》では、ホールが希望しなかったにもかかわらず「7つのヴェールの踊り」をオール・ヌードで踊り、それが放送されて大きな話題を集めた。

ヨーロッパでの初舞台はスカラ座のドビュッシー《ペレアスとメリザンド》メリザンド役。他にカルメン、ドラベッラ、サロメ、マリーを持ち役にしており、1992年にはチョン・ミョンフン指揮のパリ国立オペラとの録音で《ムツェンスク郡のマクベス夫人》カテリーナ・イズマイロヴァ役を歌って貫禄を聴かせた。

1997年にオペラの舞台から引退。残された録音は多く、カール・ベーム指揮の《フィガロの結婚》、ベルナルト・ハイティンク指揮の《ドン・ジョヴァンニ》、レナード・バーンスタイン指揮のモーツァルトのレクイエム、クラウディオ・アバド指揮の《ペレアスとメリザンド》などがある。

写真:Royal Opera House / Clive Barda







関連記事

  1. バイロイト発 〓 ソプラノのクリスティーン・ゴーキーがバイロイト音楽祭デビューを辞退

  2. ウイニペグ発 〓 ウイニペグ響が楽団員111人全員をレイオフ

  3. マインツ発 〓 2022年の「ロベルト・シューマン賞」はハインツ・ホリガーに

  4. フィラデルフィア発 〓 フィラデルフィア管弦楽団が2022/2023シーズンの公演ラインナップを発表、トゥガン・ソヒエフも客演

  5. 東京発 〓 新国立劇場の無料ストリーミング「巣ごもりシアター」が第2弾のラインナップを発表

  6. レーゲンスブルク発 〓 台湾出身のチンジャオ・リンがレーゲンスブルク歌劇場の音楽総監督に

  7. ウィーン発 〓 国立歌劇場が5月19日に再開場

  8. 札幌 〓 PMF札幌2020が開催を断念

  9. ニューヨーク発 〓 メトロポリタン歌劇場の新しい《指環》に暗雲、共同制作のイングリッシュ・ナショナル・オペラへの助成削減で

  10. ロンドン発 〓 ネトレプコとの共演断られ、夫君のエイヴァゾフが新制作のロイヤル・オペラ《イル・トロヴァトーレ》を降板

  11. ベルリン発 〓 コンツェルトハウスで第3回「オーパス・クラシック」の授賞式

  12. デトロイト発 〓 デトロイト響の次期音楽監督にヤデル・ビニャミーニ

  13. 東京発 〓 新国立劇場が4月10日からストリーミング配信を開始

  14. アムステルダム発 〓 コンセルトヘボウが5月いっぱい閉鎖、「マーラー音楽祭」もお流れ

  15. 訃報 〓 ゼフランコ・ゼフィレッリ(96)イタリアの映画監督、演出家

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。