ドイツの演出家クラウス・グート(Claus Guth)がロシア演劇連盟の年度賞「ゴールデン・マスク賞」の受賞を拒否していたことが欧米の報道で明らかになった。ロシアのウクライナ侵略に抗議したもの。主催者側は4月20日の発表会見で「今年は授与されなかった」としていた。
賞は1994年の創設で、演劇、オペラ、バレエ、モダンダンス、オペレッタ、ミュージカルなど、演劇芸術の作品に贈られている権威ある年度賞。グートの受賞は「最優秀オペラ演出」で、モスクワのボリショイ劇場で昨年手掛けたリヒャルト・シュトラウス《サロメ》の演出が評価された。
《サロメ》は昨年2月、当時の音楽監督トゥガン・ソヒエフの指揮で上演され、グート含め8部門にノミネートされた話題作。しかし、侵略が始まり、セットデザイナーのエティエンヌ・プルス、衣装デザイナーのウルスラ・クドルナ、照明デザイナーのオラフ・フリースはノミネートを辞退していた。
また、《ローエングリン》と並んで、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場との共同制作。ただ、ピーター・ゲルブ総裁は侵略が始まった直後、プーチン大統領を支援する芸術家、大統領の支援を受ける芸術家や組織との関係を断ち切ると表明。大統領との関係が取り沙汰されたアンナ・ネトレプコ、ヒブラ・ゲルズマーワを降板させており、ニューヨークでの上演は不透明。
グートは1964年、フランクフルトの生まれ。ミュンヘン大学で哲学、ドイツ文学、演劇学、ミュンヘン音楽大学で演劇とオペラの演出を学んだ新世代を代表する演出家の一人。2003年には《さまよえるオランダ人》の演出を手掛けてバイロイト音楽祭にデビュー。2006年にはザルツブルク音楽祭のモーツァルト《フィガロの結婚》が大きな話題を集めた。
その後も、オペラ界の第一線での活躍が続いており、2010年にはフランクフルト市立歌劇場《ダフネ》で、権威ある「ファウスト賞」に輝いている。また先日、演出を手掛けたロイヤル・オペラのヤナーチェク《イェヌーファ》が“英国のトニー賞”とされる「ローレンス・オリヴィエ賞」を受賞したばかり。
写真:Bolshoi Theater / Damir Yusupov
ベルリン発 〓 ドイツの演出家クラウス・グートがロシアの「ゴールデン・マスク賞」の受賞を拒否
2022/05/05
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