訃報 〓 エライジャ・モシンスキー(75)オーストラリアの演出家

2021/01/17
【最終更新日】2023/02/06

オーストラリア生まれで英国を拠点に活躍した演出家のエライジャ・モシンスキー(Elijah Moshinsky)が新型コロナウイルスに感染、14日に亡くなった。モシンスキーはルース夫人、2人の息子とロンドン南部ブラックヒースに住んでいた。8日に75歳の誕生日を迎えたところだった。

モシンスキーは混乱するロシア・ウラジオストクから上海のフランス租界に逃れたロシア系ユダヤ人が両親。5歳の時に家族でメルボルンに移住、長じてメルボルン大学で学んだ。卒業後、オックスフォード大学のセント・アントニーズ・カレッジに進み、そこでロシアの作家アレクサンドル・ゲルツェンの研究を手掛けた。

その一方、演劇の世界に没頭。オックスフォード大学とケンブリッジ大学のシェイクスピア・カンパニーの舞台「お気に召すまま」の演出を手掛け、その舞台をみた当時のロイヤル・オペラの総監督ジョン・トゥーリーの目に留まり、劇場の演出チームの一員に迎えられた。

演出家デビューは1975年。ロイヤル・オペラでブリテンの《ピーター・グライムズ》を手掛け、簡素化された演出で大成功を収め、その後、ロイヤル・オペラを中心にさまざまな演出を手掛けて名声を確立。1982年にはイングリッシュ・ナショナル・オペラで、リゲティ《ル・グラン・マカーブル》の英国初演を手掛けている。

その後、ミラノ・スカラ座やウィーン国立歌劇場、米国のメトロポリタン歌劇場からオーストラリアまで世界中の著名な歌劇場で演出を手掛け、その多くが現在も上演されている。ロイヤル・ナショナル・シアターの舞台の演出も多く、テレビ映画も手掛けている。

写真:BBC


    もっと詳しく ▷


関連記事

  1. ローマ発 〓 ローマ歌劇場は14日に再開場、続いて野外公演

  2. ベルリン発 〓 バレンボイムが「健康上の理由」で、州立オペラの定期演奏会の指揮をキャンセル

  3. ウィーン発 〓 作曲家のオルガ・ノイヴィルトにオーストリア政府が科学・芸術名誉十字章

  4. ミラノ発 〓 スカラ座が2023/2024シーズンの公演ラインナップを発表

  5. ロングボロー発 〓 ロングボロー・フェスティバル・オペラが今年上演の《ジークフリート》をストリーミング配信

  6. ウィーン発 〓 2022年の「ニューイヤー・コンサート」の指揮者はバレンボイム

  7. ハンブルク発 〓 ドイツ・グラモフォンがアバドの生誕90年を記念して、残された録音をすべて収録した限定ボックス・セットをリリース

  8. 高雄発 〓 台湾最大の総合芸術センターがオープン

  9. ブリュッセル発 〓 モネ劇場の新しい《ニーベルングの指環》全4部作上演で演出家が交代、ロメオ・カステルッチからピエール・アウディへ

  10. モントルー発 〓 ローザンヌ国際バレエ・コンクールの第1位にイタリアのマルコ・マシャーリ

  11. ウィーン発 〓 国立歌劇場がポネル演出の《フィガロの結婚》をライブ・ストリーミング

  12. デトロイト発 〓 デトロイト響が音楽監督のヤデル・ビニャミーニとの契約を延長

  13. ロンドン発 〓 ロイヤル・オペラがアントニオ・パッパーノに史上初の名誉指揮者の称号

  14. 訃報 〓 ジェーン・マニング(82)英国のソプラノ歌手

  15. ウェリントン発 〓 ニュージーランド響の次期首席指揮者にジェンマ・ニュー

  1. この記事へのコメントはありません。