ロシアのプーチン大統領が指揮者のワレリー・ゲルギエフ(Valery Gergiev)に対し、国内の歌劇場を統括する国家的なポストへの就任を打診していたことが明らかになった。新ポストでゲルギエフは、1996年から総裁を務めるサンクト・ペテルブルクのマリインスキー劇場だけでなく、モスクワのボリショイ劇場を含め、全土の歌劇場の運営を担うことになるという。
ロシア国営タス通信社が報じたもの。芸術界の受賞者たちとリモートで会見した25日、大統領から打診されたという。報道によると、大統領が提唱したのは、1917年のロシア革命以前に帝政ロシアに存在した、サンクト・ペテルブルクとモスクワのオペラ、バレエ、劇団、そしてその学校を一人の監督が掌握するスタイルという。
ボリショイ劇場ではウクライナ侵略が始まった直後、ウラジーミル・ウリン総支配人が著名ヴァイオリニストで指揮者のウラディーミル・スピヴァコフらモスクワの芸術家をまとめ上げ、「ウクライナでの特殊作戦」を止めるよう訴えた請願書を提出して衝撃を与えた。
また、音楽監督のトゥガン・ソヒエフが6日、電撃辞任した。フランス・トゥールーズの市長からプーチン政権との距離を明確にするコメントを発表するよう求められたことから、ボリショイとトゥールーズ・キャピトル管弦楽団の音楽監督を同時に辞任するという苦渋の選択を行って劇場を去った。
また、若手スター・バレリーナのオルガ・スミルノワが3月に入ってSNSに「全霊で戦争に反対する」と投稿してウクライナ侵略を非難。そのままバレエ団を退団して出国、オランダ国立バレエ団に電撃移籍していたことが16日に明らかになるなど、劇場をめぐる状況が激しく動いている。
ゲルギエフはウクライナ侵略後も沈黙を守ったことで、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者のポストをはじめ、海外のポスト、仕事のほぼすべて失った。ボリショイとマリインスキーをゲルギエフのもとに統合する動きが表面化したことで、大統領に反旗を翻したウリンの更迭は必至とみられる。
写真:Presidential Press Service / Mikhail Klimentiev
モスクワ発 〓 プーチン大統領がゲルギエフに対し、ボリショイ、マリインスキーの両方を統括するポストを打診
2022/03/27
【最終更新日】2023/11/17
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