モスクワ発 〓 ロシア法務省がピアニストのキーシンを“スパイ”指定

2024/07/22

ロシア法務省が7月19日、ピアニストのエフゲニー・キーシン(Evgeny Kissin)を外国のスパイとみなす「外国のエージェント」に指定したと発表した。発表によると、今回はキーシン以外に詩人や聖職者ら4名が新たに指定された。いずれも、ロシアのウクライナ侵攻(ロシアでは特別軍事作戦)に反対、ウクライナ軍への募金活動に参加したことがその理由。

ロシアでは2022年以降、指定された国民と組織は、その業務内容と支出だけでなく、個人のSNS上の出版物を含むすべての出版物について法務省に定期的に報告することが義務付けられている。また、指定されると、教育、情報製品の制作、公共イベントの主催、選挙管理委員会の委員になることが禁止されている。

キーシンはモスクワ生まれの52歳。ユダヤ系の家系に生まれ、グネーシン音楽学校に進み、幼い頃から神童ぶりを発揮。12歳でドミトリー・キタエンコ指揮のモスクワ・フィルハーモニー管弦楽団と共演、その時に弾いたショパンのピアノ協奏曲の演奏で一躍注目を浴びた。以来、当代を代表するピアニストの一人として国際的な活躍を続けている。

1990年代から海外を拠点に活動、2016年からはチェコの首都プラハに移り住み、ロシア以外に英国とイスラエルの国籍も持つ。ロシアのウクライナに対する武力侵攻を最も批判しているロシア出身のアーティストの一人で、侵攻直後にSNSに長文の抗議文を発表している他、この6月にも「ロシアの侵略者がウクライナに与えるあらゆる恐怖にもかかわらず、この素晴らしい国は生き残る」と投稿している。

写真:Czech Philharmonic / Galerie Rudolfinum


関連記事

  1. カトヴィツェ発 〓 ヨーロッパ最大のパイプ・オルガンが誕生、エサ=ペッカ・サロネンが自作のオルガン曲で祝福

  2. 訃報 〓 オットー・シェンク(94)オーストリアの演出家

  3. ベルリン発 〓 コーミッシェ・オーパーが2021/2022シーズンの公演ラインナップを発表

  4. ウィーン発 〓 国立歌劇場のストリーミング配信が新しいラインナップ

  5. クリーブランド発 〓 ウェルザー=メストが2027/2028シーズンでクリーブランド管の音楽監督を退任、在職25年は音楽監督として歴代最長

  6. オーフス発 〓 デンマーク国立歌劇場が音楽監督のクリストファー・リヒテンシュタインとの契約を延長

  7. 福岡発 〓 九州交響楽団が音楽監督の小泉和裕との契約を延長

  8. リーズ発 〓 リーズ国際ピアノ・コンクールはカザフスタンのアリム・バイゼンバエフが優勝、小林海都が2位に

  9. 浜松発 〓 浜松国際ピアノ・コンクールが第11回の開催中止を発表

  10. ウィーン発 〓 国立歌劇場がファン・ディエゴ・フローレスの降板でライブ・ストリーミングを中止

  11. チューリッヒ発 〓 チューリッヒ歌劇場の古楽オーケストラ「シンティラ管」の芸術監督にリッカルド・ミナーシ

  12. カールスルーエ発 〓 バーデン州立オペラが2025/2026シーズンの公演ラインナップを発表

  13. ケベック発 〓 空席だったケベック響の音楽監督にクレメンス・シュルト

  14. バーゼル発 〓 バーゼル・シンフォニエッタの次期首席指揮者にティトゥス・エンゲル

  15. 訃報 〓 ペーター・スヴェンソン(57)ドイツのテノール歌手

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。