サンターガタ発 〓 イタリア政府が競売危機のヴェルディの旧居を取得、オペラ界は総力あげてチャリティー・キャンペーン

2023/02/05

イタリア政府が“オペラ王”、作曲家のジュゼッペ・ヴェルディが約50年暮らしたサンターガタの旧居を取得することになった。ジェンナーロ・サンジュリアーノ文化相が先週、下院議会で表明したもの。旧居は昨年まで美術館として運営されていたが、相続をめぐって閉鎖され、競売に掛けられる危機に陥っていた。

サンターガタは北イタリアのパルマ近くの小さな街で、ピアチェンツァ、クレモナを結ぶ三角形の真ん中に位置する。旧居はヴェルディは1848年に取得し、1851年から1901年に亡くなるまで居を構えた。元々は両親のために所得したが、母の死後、二人目の妻となるジュゼッピーナ・ストレッポーニと移り住んだ。

転居後、ヴェルディは本館の両側に自ら設計した2棟を増築、温室、礼拝堂、馬車小屋、レモン畑や池が造られ、ジュゼッピーナの好きなモクレンの花をはじめとする植栽も整えられた。ここから《椿姫》から《イル・トロヴァトーレ》、《運命の力》、《ドン・カルロ》、《アイーダ》、《ファルスタッフ》がここから世に送り出された。

競売のニュースが流れた時点で、イタリアでは音楽家たちが競売への懸念を表明。指揮者のリッカルド・ムーティは新聞の取材に「ヴェルディはダンテやレオナルドのようなもので、彼のヴィラが個人の手に渡ることは考えられない。旧居は文化の聖地である」と訴えていた。

イタリアでの報道をまとめると、文化省は取得財源確保のために「ビバ! ヴェルディ」と名付けたキャンペーンを提起、これにスカラ座など14の団体が呼応、チャリティー公演を行ってその収益を“基金”に拠出する。キャンペーンは2月のアレーナ・ディ・ヴェローナの《アイーダ》で幕を開け、スカラ座が6月の《マクベス》で締め括る。


2月10日
アレーナ・ディ・ヴェローナはフランコ・ゼッフィレッリ演出の《アイーダ》を上演。マッシミリアーノ・ステファネッリ指揮、モニカ・コネサ、イワン・マグリ、ケテバン・ケモクリッツェ、パク・ヨンジュン、アントニオ・ディ・マッテオらが出演。

2月14日
ローマ歌劇場は《レクイエム》を上演。指揮はミケーレ・マリオッティで、エレナ・スティッキナ、ステファン・ポップ、ギオルギ・マノシュヴィリが出演する。

2月23日
トリノのテアトロ・レッジョは、ウィリアム・フリードキン演出の《アイーダ》。指揮はミケーレ・ガンバで、アンジェラ・ミード、シルビア・ベルトラーミ、ゲヴォルグ・ハコブヤン、エフゲニー・スタヴィンスキー、マルコ・ミミカらが出演する。

2月26日
ボローニャ劇場がダニエル・オーレンの指揮によるガラ・コンサート「Gala Verdiano」を開催。ソリストはラトニア・ムーア、ルチアーノ・ガンチら。

3月16日
ヴェネチアのフェニーチェ歌劇場がアンドレア・ベルナルドの演出による《エルナーニ》を上演。リッカルド・フリッツァの指揮で、ピエロ・プレッティ、エルネスト・ペッティ、ミケーレ・ペルトゥーシ、アナスタシア・バルトリらが出演。

3月28日
ジェノヴァのカルロ・フェリーチェが《二人のフォスカリ》を上演する。演出はアルビス・ ヘルマニスで、指揮はレナート・パルンボ。フランコ・ヴァッサーロ、ファビオ・サルトーリ、アンジェラ・ミード、リッカルド・ファッシらの出演。

3月31日
カリアリ・オペラ劇場が、ヴェルディとチャイコフスキーのオーケストラ作品を演奏するコンサートを開催する。ジャウマ・サントンハの指揮。

4月18日
パレルモのマッシモ歌劇場がヴェルディの音楽を使った「Le allegre Comari di Falstaff」を上演する。

4月19日
トリエステ歌劇場がダニエラ・バルチェローナを迎えるコンサートを開催。

4月20日
パーリのペトゥルッツェッリ劇場は《アッティラ》を上演。出演はマルコ・ミミカ、マリア・トマッシ、クロジャン・カカニら。

5月7日
ナポリのサン・カルロ劇場で、アンナ・ピロッツィとフレディ・デ・トマーゾが出演するコンサートを開催する。指揮はジャコモ・サグリパンティ。

5月10日
フィレンツェ歌劇場がヴェルディの序曲とバレエをフィーチャーしたコンサートを開催。指揮は音楽監督のダニエレ・ガッティ。

5月26日
ローマのサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団がヴェルディをテーマにしたコンサートを開催。

6月15日
スカラ座がキャンペーンを締め括る形で《マクベス》を上演する。指揮はジャンパオロ・ビザンティ。出演はルカ・サルシ、エカテリーナ・セメンチュク、ファビオ・サルトーリら。

写真:Villa Verdi


関連記事

  1. 訃報 〓 ジョーゼフ・ホロヴィッツ(95)英国の作曲家

  2. トリノ発 〓 テアトロ・レッジョの大規模改修工事スタート、2022年9月まで閉館

  3. ウィーン発 〓 ウィーン響が鉄道での移動を優先、「カーボン・ニュートラル」の取り組みで

  4. リッチモンド発 〓 メニューイン国際ヴァイオリン・コンクールでマリア・ドゥエニャスが優勝

  5. ベルリン発 〓 ペトレンコが足の怪我を押して、ベルリン・フィルのシーズン開幕コンサートを指揮

  6. ケルン発 〓 ケルン放送管の次期首席指揮者にアイルランドの指揮者デヴィッド・ブロフィー

  7. ウィーン発 〓 国立バレエの芸術監督にアレッサンドラ・フェリ

  8. アムステルダム発 〓 オランダ国立オペラが新作の《トスカ》と《魔弾の射手》の無料ストリーミングを開始

  9. ロンドン発 〓 ティルソン・トーマスがマーラーの交響曲第3番で、終楽章の演奏前に舞台を降りようとするハプニング

  10. シカゴ発 〓 ムーティとシカゴ交響が来年も全米ツアー

  11. ベルリン発 〓 第2回「オーパス・クラシック賞」決まる

  12. サンクト・ペテルブルク発 〓 ミハイロフスキー劇場の音楽監督にアレヴティナ・ヨッフェ、ロシア初の女性音楽監督

  13. マンチェスター発 〓 カーチュン・ウォンが日フィルに続いて、ハレ管の首席指揮者に

  14. サンティアゴ発 〓 アンドレ・リュウ率いる“ヨハン・シュトラウス・オーケストラ”がチリで立ち往生

  15. 訃報 〓 ワルター・バリリ(100)オーストリア出身のヴァイオリニスト, ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の元コンサートマスター

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。