ミラノ発 〓 音楽監督のリッカルド・シャイーが反論、ウクライナ領事のスカラ座《ボリス・ゴドノフ》上演取り止め要請に

2022/11/16

スカラ座の音楽監督を務めるリッカルド・シャイーがウクライナの在ミラノ領事からの《ボリス・ゴドノフ》上演取り止め要請に対して拒否する姿勢を鮮明にした。有力紙「コリエーレ・デラ・セラ」の取材に対して、「私たちはウクライナと共に紛争の終結を待っていますが、政治とその結果が文化に強制力を与えることはできません」と述べている。

要請は先週、スカラ座のドミニク・マイヤー総裁はじめ、ミラノのジュゼッペ・サラ市長とロンバルディア州のアッティリオ・フォンタナ知事に送られたもの。上演がイタリアのウクライナ社会に大きな失望と後悔をもたらしたとした上で、要請理由をロシアによるいかなるプロパガンダの要素も許さないためとしている。

シャイーは取材に対し、ロシアのウクライナの武力侵攻が始まった4月、スカラ座でロッシーニの《スターバト・マーテル》を演奏したことを振り返り、「100人の音楽家と国際的なキャストで、ウクライナ防衛のための劇場参加を表明するために舞台に立ちました。それは戦争に対するミラノ人の痛みの叫びだった」と指摘した。

上演する《ボリス・ゴドノフ》については、「権力に到達するために犯した殺人の代償を、まず狂気で、そして死で支払うことになる人物を描いた作品。カスパー・ホルテンの興味深い演出によるこのオペラを観れば、プーチンのプロパガンダがないことに気づくだろう」。

シャイーはまた、1月にチャイコフスキー、その後、プロコフィエフの没後70周年記念コンサートを行うことを明らかにし、「芸術に対する客観性が欠けている。狂気と皇帝の死で終わる名作をカットすることは、文化にペナルティを課すことになる。2月24日以来起きている大混乱の代償を、芸術が払ってはならないのです」と言葉を結んでいる。

Teatro alla Scala / Marco Brescia & Rudy Amisano


関連記事

  1. モスクワ発 〓 チャイコフスキー記念大交響楽団の首席客演指揮者にフェリックス・コロボフ

  2. ミュンヘン発 〓 ラハフ・シャニがミュンヘン・フィルの首席指揮者に

  3. ミラノ発 〓 カウフマンがスカラ座の新シーズンの開幕を飾るヴェルディ《運命の力》を降板

  4. シドニー発 〓 オペラハウスが5日に《メリー・ウィドウ》で再開場

  5. 福岡発 〓 九州交響楽団が音楽監督の小泉和裕との契約を延長

  6. ニューヨーク発 〓 ジュリアード音楽院が作曲科の科長ロバート・ビーザーをセクハラ疑惑で休職に

  7. 東京発 〓 N響の第1コンサートマスターに長原幸太

  8. クリーブランド発 〓 癌治療中のウェルザー=メストが1月からクリーブランド管の指揮台に

  9. 訃報 〓 斎藤雅広(62)日本のピアニスト

  10. トリノ発 〓 アンドレア・バッティストーニがテアトロ・レッジョの音楽監督に

  11. ミルウォーキー発 〓 ミルウォーキー響が2020/2021シーズンをキャンセル

  12. ブレーメン発 〓 バレンボイムがウェスト・イースタン・ディヴァン管とのヨーロッパ・ツアーをスタート

  13. ザルツブルク発 〓 暴力事件で謹慎中のガーディナー、来夏のザルツブルク音楽祭で現場復帰か?

  14. ロッテルダム発 〓 ロッテルダム・フィルもゲルギエフとの「関係を終了」と発表

  15. バルセロナ発 〓 バルセロナ下院がターミナル駅「サンツ駅」を「モンセラート・カバリエ駅」に改称する議案を可決

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。