ルーマニア出身の世界的ピアニストのラドゥ・ルプー(Radu Lupu)が17日、スイスのローザンヌで亡くなった。76歳だった。内省的で繊細な音楽づくり、淡々としていながらテクニックに裏付けられた多彩な音色を駆使した詩的かつエレガントな演奏を展開、多くのファンを魅了した。
1945年、ルーマニア東部ガラツィの生まれ。ブカレスト音楽院に進み、ディヌ・リパッティを指導したフロリカ・ムジチェスクに学び、1960年から1968年まで旧ソ連のモスクワ音楽院に留学してスタニスラフ・ネイガウスらに師事した。
1966年の第2回「ヴァン・クライバーン国際コンクール」、1967年の「エネスコ国際コンクール」で優勝。1969年の「リーズ国際ピアノ・コンクール」で優勝し、直後のロンドン・デビュー時にデイリー・テレグラフ紙で「千人に一人のリリシスト」と評された。その後、英国を拠点に国際的な演奏活動を展開した。
ベートーヴェン、ブラームス、グリーグ、モーツァルト、シューベルト、シューマンを得意とし、数多くの録音が残されている。グラミー賞には2度ノミネートされ、1996年にシューベルトのピアノ・ソナタ2曲のアルバムで受賞している。1993年以降は一切の録音や放送収録、インタビューを拒み、この数年は体調不良によるキャンセルが増え、2018/2019シーズン終了をもって演奏活動から引退ていた。
写真:Matthias Creutziger
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