ロシア・ノボシビルスクにある国立オペラ・バレエ劇場は、6月2日に予定されていたスター・ソプラノ歌手アンナ・ネトレプコ(Anna Netrebko)のコンサートを「ロシアの行動を非難した」ことを理由に中止すると発表した。
ネトレプコは3月30日、Facebookへの投稿を通じて、ロシアのウクライナ侵略によって生じた戦争を非難、また、プーチン大統領との関係についても否定する声明を発表している。
劇場の決定はこの声明に対するプーチン政権の“報復”とみられ、声明で「昨日、アーティストが我が国の行動を非難する声明を発表した。ヨーロッパに住むこと、ヨーロッパの会場で演奏する機会が、彼女にとって祖国の運命よりも重要であることが判明した」と、厳しく非難している。
また、声明は「故郷を棄てる文化人がいることを恐れてはいけません。私たちの国は才能に富んでおり、昨日の偶像は明確な市民的立場を持つ他の偶像に取って代わられるだろう」と指摘。劇場は次の公演に、チューリッヒ歌劇場の《マクベス》の公演でネトレプコの代役に立ったヴェロニカ・ディジョーエヴァを起用する演奏会を入れ込んだ。
3日の声明については出された直後、彼女の降板を決断した米国のメトロポリタン歌劇場のピーター・ゲルブ総裁が「ニューヨーク・タイムズ」紙に対して、「私たちは、自分たちの立場を変える用意はない。もし、アンナが長期的にプーチンと本当に完全に縁を切ったことを示すなら、会話をする用意はある」と述べるに留まっている。
一方、プーチン政権は政権を批判する行動を厳罰に処ための法律の制定などに乗り出しており、3日の声明以降、ネトレプコのロシア版SNSが閉鎖された。ネトレプコは当面、出演の場が限られるという厳しい状況が続きそうだ。
写真:Anna Netrebko
ノボシビルスク発 〓 ネトレプコのロシアでの公演中止へ、戦争批判声明への“報復”か?
2022/04/01
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