訃報 〓 ジェームズ・レヴァイン(77)米国の指揮者

2021/03/18
【最終更新日】2023/02/06

米国の指揮者ジェームズ・レヴァイン(James Levine)が3月9日、パーム・スプリングで亡くなった。77歳だった。主治医は死因を明らかにしていないが、1990年代半ばからパーキンソン病を発症、2008年に悪性腫瘍が見つかった右腎臓を摘出、椎間板手術も何度も受けていた。戦後を代表する指揮者の一人で、1970年代からニューヨークのメトロポリタン歌劇場の音楽監督・芸術監督を40年以上にわたった務めた。

シンシナティのユダヤ系の家庭の生まれ。父親はヴァイオリニストでダンス・バンドのリーダー、母親は女優。ジュリアード音楽院卒業後、クリーヴランド管弦楽団でジョージ・セルのアシスタントを務めるなどした後、1970年にフィラデルフィア管弦楽団を指揮してデビューした。

メトロポリタン歌劇場へのデビューは1971年で、その大成功を受けて1975年に音楽監督、1986年には芸術監督に就任した。2015/2016シーズン末にパーキンソン病の悪化で退任した後も名誉音楽監督として指揮を続けていた。しかし、2018年3月に過去の男性音楽家に対するセクハラ行為で解雇された。その後、歌劇場とは裁判開始前の2019年8月に350万ドルで和解が成立した。

一方、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団(1999-2004)、ボストン交響楽団(2004-2011)の首席指揮者や音楽監督も歴任。音楽祭とも縁が深く、オーストリアのザルツブルク音楽祭には1975年にデビュー、ドイツのバイロイト音楽祭ではデビューとなった1982年にワーグナー《パルジファル》の初演百周年公演を指揮している。また、スイスのヴェルビエ音楽祭の常連で、シカゴのラヴィニア音楽祭、シンシナティの五月音楽祭の音楽監督なども務めた。

メトロポリタン歌劇場解雇後は指揮活動から遠ざかっていたが、フィレンツェ歌劇場で2021年1月半ばにコンサートを指揮することが決まっていた。しかし、新型コロナウイルスの流行が収束しないことから公演がキャンセルされて現場復帰はかなわなかった。また、6月にも、ローマのサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団の指揮台に立つことになっていた。

写真:Metropolitan Opera / Steve J. Sherman





関連記事

  1. デトロイト発 〓 演出家のユヴァル・シャロンがミシガン・オペラ・シアターの芸術監督に

  2. ニューヨーク発 〓 エマーソン弦楽四重奏団がリンカーンセンターでお別れコンサート

  3. ワシントン発 〓 ジャナンドレア・ノセダがナショナル響とウクライナ国歌

  4. パリ発 〓 マイケル・バレンボイムがミケランジェロ弦楽四重奏団のメンバーに、今井信子の後任

  5. ネイプルズ発 〓 ウィーン・フィルの米国ツアー、二人目の代役指揮者はデイヴィッド・ロバートソン

  6. パリ発 〓 シャンゼリゼ劇場が2021/2022シーズンの公演ラインナップを発表

  7. ニューヨーク発 〓 メトロポリタン歌劇場が“Nightly Met Opera Streams”第7週のラインナップ発表

  8. ミラノ発 〓 スカラ座のプッチーニ没後100年記念コンサートがピアノ伴奏に、オーケストラらのストライキで

  9. 訃報 〓 ジャンナ・ロランディ(68)アメリカのソプラノ歌手

  10. ハンブルク発 〓 新しい「アルゲリッチ音楽祭」でデュトワはドイツに復帰

  11. クーパースタウン発 〓 グリマーグラス・フェスティバル、夏の音楽祭に向けて屋外ステージを建設

  12. オスロ発 〓 ノルウェー放送管の次期首席指揮者にペトル・ポペルカ

  13. ロサンゼルス発 〓 ドゥダメルがロサンゼルス・フィルとの契約を延長

  14. サンフランシスコ発 〓 サンフランシスコ・オペラがオペラの衣装をオンラインで販売

  15. ウィーン発 〓 コンツェルトハウスがクルレンツィス&ムジカエテルナのコンサートをキャンセル、ウクライナ大使の要請受け

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。