訃報 〓 イェルク・デームス(90)オーストリアのピアニスト

2019/04/18
【最終更新日】2023/02/16

オーストリアのピアニスト、イェルク・デームス(Jörg Demus)が16日に亡くなった。90歳だった。パウル・バドゥラ=スコダ、フリードリヒ・グルダとともに「ウィーン三羽烏」と呼ばれた存在。バッハ、モーツァルト、シューマンといったドイツ物を中心に350を超えるLP、200を超えるCDをリリースしており、国際的に高い評価を受けてきた。

デームスは1928年、ウィーンの西に広がるザンクト・ペルテン生まれ。父親は高名な美術史学者オットー・デームス、母親はヴァイオリニスト。11歳でウィーン音楽アカデミーに入学、ウォルター・ケルシュバウマー、ハンス・スワロフスキー、ヨーゼフ・クリップス、ヨーゼフ・マルクスたちから指導を受けた。

1945年に卒業した後も、パリでイヴ・ナットに師事。その後、ザルツブルク音楽院でヴァルター・ギーゼキングにも師事、さらにヴィルヘルム・ケンプ、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ、エトヴィン・フィッシャーら、伝説的な巨匠の薫陶を受けた。1956年のブゾーニ国際コンクールで優勝。その後、世界的な活躍を続けてきた。

伴奏者としての評価も高く、ソプラノのエリーザベト・シュヴァルツコップ、バリトンのディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ、ヴァイオリンのヨーゼフ・スークといった名演奏家のパートナーとしても活躍した。ザルツブルク郊外に設けられた拠点「ムゼオ・クリストフォリ」には歴史的鍵盤楽器のコレクションが陳列され、毎年夏にマスタークラスを行っていた。

1961年の初来日以来、毎年のように来日した親日家で、2011年春の東日本大震災後の時にも、多くのアーティストが来日をキャンセルする中、演奏会を開いている。2018年11月には東京でも90歳を卯変えた記念リサイタルを開き、これが最後の来日となった。

写真:Jörg Demus Festival / Irene Zandel


関連記事

  1. ブラウンシュヴァイク発 〓 州立劇場が《蝶々夫人》のポスター・デザインを変更、旭日旗を連想させるという抗議受け

  2. クアラルンプール発 〓 マレーシア・フィルの音楽監督に準・メルクル

  3. ハーグ発 〓 レジデンティ管弦楽団の次期首席指揮者にアーニャ・ビールマイアー

  4. 訃報 〓 ラドミル・エリシュカ(88)チェコの指揮者

  5. ベルン発 〓 スイスは1,000人以上のイベントを禁止、新型コロナウイルスの感染拡大で

  6. ニューヨーク発 〓 カーネギーホールがゲルギエフに“追加制裁”、5月のマリインスキー管との公演もキャンセル

  7. 東京発 〓 東フィルが2023シーズンのラインナップを発表

  8. シュヴェービッシュ・グミュント発 〓 ジョシュア・リフキンにヨーロッパ教会音楽賞

  9. フィレンツェ発 〓 フィレンツェ5月音楽祭も中止

  10. ウィーン発 〓 アルベナ・ダナイローヴァが2024年元旦の「ニューイヤー・コンサート」のコンサートマスターに

  11. フォートワース発 〓 韓国のイム・ユンチャンが第16回「ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール」で史上最年少優勝

  12. ミュンヘン発 〓 青木尚佳がミュンヘン・フィル初の女性コンサートマスターとしてデビュー

  13. ロンドン発 〓 グラインドボーン音楽祭がストリーミング配信のための有料プラットホーム起ち上げ、名付けて「グラインドボーン・アンコール」

  14. ベルリン発 〓 ドイツの7つコンサートホールがキーウ響支援のためのドイツ演奏ツアー

  15. ギュータースロー発 〓 若手歌手のための国際コンクール「新しい声」が終了

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。