訃報 〓 ソフィア・グバイドゥーリナ(93)ロシア出身の作曲家

2025/03/14
【最終更新日】2025/04/10

国際的な活動を続けていたロシア出身の作曲家ソフィア・グバイドゥーリナ(Sofia Gubaidulina)が13日に亡くなった。93歳だった。思索的な作風で、民族楽器を用いて新しい響きを紡ぎ出すなど、古今東西の様式を融合させた。

旧・ソビエト連邦タタール自治共和国(現在のロシア連邦タタールスタン共和国)チストポリの生まれ。父親はタタール系イスラム教徒、母親はロシア系ポーランド系ユダヤ人という家庭で育つ。1932年に家族で共和国の首都カザンに移住。カザン音楽学校、次いでモスクワ音楽院に進み、教会に通うかたわら電子音楽の制作に没頭した。

モスクワ音楽院在学中、新しい音律を探究する姿勢が「いい加減な音楽」と批判されたが、1958年に卒業審査を受けもったショスタコーヴィチから「あなたが(当局のいう)間違った道を歩むことを望む」と励まされたことで作曲を続ける決意を固めたという。

卒業後は作曲活動のかたわら映画音楽の仕事に従事。即興ならば当局の検閲を掻い潜ることができるため、友人の作曲家ヴィクトル・ススリンらと民族楽器の即興演奏グループ「アストレイヤ」を結成。ロシア、コーカサス、中央アジアなどの珍しい民族楽器を使い、前衛と大衆の音楽様式を融合させる活動を続けた。

しかし、1979年には作曲家連合を牛耳るティホン・フレンニコフによって要注意人物の7人の1人となり、その後、2番目の夫ニコライ・ボコフの著作をめぐってKGBから嫌がらせを受けたという。

国際的に注目を浴びるようになったのは、1985年に西側への旅行を許されたことから。その頃からヴァイオリニストのギドン・クレーメルらがヴァイオリン協奏曲《オッフェルトリウム》などの作品を精力的に演奏。それらが西側で高く評価されて多くの賞に輝き、国際的な名声を確立した。

それでも窮屈な生活が続き、1992年になって、3番目の夫で理論物理学者のピョートル・メシチャニノフとロシアを離れ、同時代の作曲家アルフレッド・シュニトケが住むハンブルク近郊に移住して亡くなるまで旺盛な作曲活動を続けていた。

生涯に100以上の出版作品を残しており、その音楽は宗教的な美しさと民族的な響きを併せ持ち、正教に改宗したタタール人として、キリスト教の神学や神秘主義を題材とした宗教曲を数多く手掛けている。本人は自分の音楽世界を「響きの雲」と表現している。

代表作に1979年のチェロとオルガンのための《イン・クローチェ》、一つの歌詞が形を変えて30分以上響く1990年の《アレルヤ》、ヴァイオリン、チェロとバヤーン(ロシアの民族楽器でアコーディオンの一種)を使った1991年の《シレンツィオ=静寂》、1993年のヴァイオリンとピアノための《綱の上の踊り手》など多数。

また、2000年にはシュトゥットガルト国際バッハ・アカデミーの委嘱を受け、タン・ドゥン、オスバルド・ゴリホフ、ヴォルフガング・リームの3人と《新ヨハネ受難曲》を作曲。その後、《ヨハネ福音書による復活祭オラトリオ》を完成させている。2005年にはベートーヴェンの交響曲第5番を下敷きにした《終末の光明》がBBCプロムスで初演されている。

写真:Elbphilharmonie / Peter Fischli


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