訃報 〓 オットー・シェンク(94)オーストリアの演出家

2025/01/10
【最終更新日】2025/01/13

オーストリアの演出家オットー・シェンク(Otto Schenk)が1月9日、ザルツカンマーグート・イルゼー湖畔の別荘で亡くなった。94歳だった。戦後を代表する演出家の一人で、オペラではウィーン国立歌劇場やザルツブルク音楽祭で数多くの演出を手掛け、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場のワーグナー《ニーベルングの指環》なども手掛けた。

ウィーン生まれで、ウィーン大学で法律と政治学を学んだ後、マックス・ラインハルト・セミナーで演技を学んだ後、ヨーゼフシュタット劇場及びウィーンのフォルクス劇場で俳優として、ウィーンのカバレット・ジンプルでコメディアンとしてのキャリアをスタートさせた。

演出家としての仕事を始めたのは1950代前半で、ブルク劇場、ミュンヘン室内劇場で、シェイクスピア、シュニッツラー、ホルヴァート、チェーホフの演劇の舞台を手がけるようになる。 1957年、ザルツブルク州立劇場でモーツァルト《魔笛》を手掛け、オペラの演出家としてデビューを果たした。その後、1962年のアン・デア・ウィーン劇場でベルク《ルル》の演出を手掛けて注目を集めた。

1964年にはヤナーチェク《イェヌーファ》の演出を手掛けてウィーン国立歌劇場にデビュー。作品の文学性と伝統に忠実な作風が評価され、2014年までにリヒャルト・シュトラウス《薔薇の騎士》、ヨハン・シュトラウスⅡ《こうもり》、ジョルダーノ《アンドレア・シェニエ》、ベートーヴェン《フィデリオ》、ドニゼッティ《愛の妙薬》などの演出を手掛け、それらの多くがいまでも再演されている。

1970年代から1980年代にミラノ・スカラ座、ロンドンのロイヤル・オペラ、ドイツのバイエルン州立歌劇場、ハンブルク州立歌劇場などの歌劇場で、さまざまなプロダクションを演出。メトロポリタン歌劇場では《ニーベルングの指環》が2009年まで上演された。2006年、アンナ・ネトレプコ主演のドニゼッティ《ドン・パスクワーレ》が最後に手掛けたプロダクションとなった。

俳優としての活動も晩年まで続けており、2019年にはテレビ映画「Vier Saiten」に出演。2020年には、古巣のヨーゼフシュタット劇場「桜の園」で最後の舞台に立った。1976年にオーストリアの学術・芸術功労大十字章、1994年には大金栄誉勲章、2016年にプラチナ・ロミー賞などを授与された。

写真:Ernst Kainerstorfer


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