訃報 〓 野島稔(76)日本のピアニスト

2022/05/11
【最終更新日】2023/02/06

日本を代表するピアニストの一人で、2011年から東京音楽大学の学長の学長を務めていた野島稔(Minoru Nojima)が9日、肺がんのため亡くなった。76歳だった。国際派ピアニストとして活躍、教育者としても国際的な音楽コンクールの審査委員も歴任し、後進の育成に尽力した。

1945年、神奈川県横須賀市の生まれ。3歳からピアノを始め、その後、井口愛子氏に師事。小学校5年生で、ヴィルヘルム・ロイブナー指揮のNHK交響楽団と共演した。桐朋学園高校3年の1963年、第32回日本音楽コンクールで第1位を獲得して注目を集めた。

1966年から旧・ソ連政府に招かれてモスクワ音楽院に留学、名ピアニストとして知られたレフ・オボーリンに師事した。1969年に行われた米国の第3回「ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール」で第2位に入賞。翌1970年にニューヨークのカーネギー・ホールでデビューし、国際的なキャリアをスタートさせた。

研ぎ澄まされたテクニックに支えられた透明でやわらかい音色を紡ぎ出すことで知られ、米国のレーベルからリリースされた1986年録音の『ノジマ・プレイズ・リスト』、1989年録音の『ノジマ・プレイズ・ラヴェル』がその超絶技巧と圧倒的な表現力で話題を呼び、国際的な評価を確立した。

仙台国際音楽コンクールをはじめ、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール、ベルギーのエリザベート王妃国際コンクールなど多数のコンクールで審査員を歴任。2006年には、自らが審査委員長を務める「野島稔・よこすかピアノコンクール」を横須賀芸術劇場で創設。この5月にコロナ禍の収束で4年ぶりの開催が予定されていた。

写真:Tokyo College of Music


関連記事

  1. ニューヨーク発 〓 シティ・オペラの音楽監督兼首席指揮者にコンスタンチン・オルベリアン

  2. モスクワ発 〓 ボロディン弦楽四重奏団の新リーダーにニコライ・サチェンコ

  3. ミュンヘン発 〓 世界最大のビールの祭典「オクトーバーフェスト」も中止

  4. 訃報 〓 エドゥアルド・アルテミエフ(86)ロシアの作曲家

  5. ブリスベン発 〓 「オペラ・オーストラリア」が新しい“リング”チクルス

  6. 東京発 〓 東京フィルが2022シーズンの定期演奏会ラインナップを発表、バッティストーニ、チョン、プレトニョフが揃い踏み

  7. フィラデルフィア発 〓 フィラデルフィア管弦楽団が2022/2023シーズンの公演ラインナップを発表、トゥガン・ソヒエフも客演

  8. パリ発 〓 フランスの週刊風刺新聞が指揮者のフランソワ=グザヴィエ・ロトのセクハラ行為を告発

  9. ミュンヘン発 〓 ミュンヘン市長もゲルギエフに“最後通牒”、ロシアのウクライナ進攻めぐり

  10. 大津発 〓 びわ湖ホールが2019年度のラインナップを発表

  11. ウィーン発 〓 国立歌劇場が4月第3週のストリーミング・ラインナップを発表、新制作の《パルジファル》も

  12. ロンドン発 〓 2024年の「最も忙しい指揮者」はクラウス・マケラがアンドリス・ネルソンスを抜いてトップに

  13. 訃報 〓 伊藤京子(94)日本のソプラノ歌手

  14. 訃報 〓 リブシェ・ドマニーンスカ(96)チェコのソプラノ歌手

  15. 訃報 〓 イヴァン・モズゴヴェンコ(97)ロシアのクラリネット奏者

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。