イタリアのテノール歌手ランド・バルトリーニ(Lando Bartolini)が28日、ピストイアの自宅で亡くなった。87歳だった。名歌手マリオ・デル・モナコを彷彿とさせる輝かしく、ドラマティックな声を持ち、1970年代から2000年代にかけて世界的に活躍した。
フィレンツェ近くのプラート生まれで、実家の織物工場で働いた後、1966年に米国フィラデルフィアに移住して機械関係の仕事に就いたが、1967年からバス歌手のニコラ・モスコーナに付いて改めて声楽を学び、1968年にフィラデルフィアのセント・ジョセフ大学劇場でプッチーニ《外套》のルイージ役を歌って歌手デビューした。
本格的なオペラ・デビューは1973年、バルセロナのリセウ大劇場でマスカーニ《イリス》のオーサカ役。その後、スイスのサンクト・ガレン劇場、ニューヨーク・シティ・オペラのスタッフとなり、1982年にはミラノ・スカラ座のヴェルディ《エルナーニ》のタイトルロールを歌ってデビューした。
1983年にはヴェルディ《アイーダ》ラダメスを歌ってヴェローナ音楽祭にデビュー。それを皮切りに1990年代まで、ラダメス、プッチーニ《トゥーランドット》のカラフ、レオンカヴァッロ《道化師》のカニオなどで出演を重ねた。
また、1985年にプッチーニ《ラ・ボエーム》のロドルフォを歌ってウィーン国立歌劇場にデビュー、翌年4月には歌劇場の日本公演でジュゼッペ・シノーポリ指揮のプッチーニ《マノン・レスコー》にデ・グリュー役で出演している。日本公演の直後にはプッチーニ《トスカ》カヴァラドッシ役でニューヨークのメトロポリタン歌劇場にデビューしている。
その後、1998年には、中国・北京の紫禁城で行われたフィレンツェ歌劇場の《トゥーランドット》公演に出演。65歳だった2002年には、新国立劇場のヴェルディ《イル・トロヴァトーレ》マンリーコを歌うなど、キャリアの後年までリリコ・スピントのドラマティックな声を保ち、世界各地の歌劇場に出演を重ねた。
生涯にラダメスは240回以上、カラフは179回、マンリーコは160回歌い、約40年のキャリアの中で49の役を演じている。国際的な名声を築きながらも飄々として大物ぶらず、指揮者、歌手仲間から愛されるキャラクターで知られた。
写真:Bayerische Staatsoper
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