ロシアのソプラノ歌手タマーラ・ミラシキーナ (Tamara Milashkina)が1月10日、ウィーンで亡くなった。89歳だった。ソ連時代からボリショイ劇場を代表する歌手として活躍。ロシアの歌手として初めてミラノ・スカラ座に出演した他、ヨーロッパ各地の歌劇場に出演を重ねて国際的な活躍を続けた。
ロシア南部、カスピ海に近いアストラハンの生まれ。1958年にボリショイ劇場のメンバーとなり、1989年まで劇場を代表するソプラノ歌手の一人として活躍した。1961年から1962年にかけてスカラ座のオペラ・スタジオに留学。ジャナンドレア・ガヴァッツェーニ指揮のヴェルディ《レニャーノの戦い》にリディア役で出演して、スカラ座の舞台に立ったソ連初のソプラノ歌手となった。
当たり役は、チャイコフスキーの《スペードの女王》のリーザ、《エフゲニー・オネーギン》のタチアーナ、プロコフィエフ《戦争と平和》のナターシャで、スカラ座への出演はその後も続き、1964年の《スペードの女王》と《戦争と平和》、1973年の《エフゲニー・オネーギン》とボロディン《イーゴリ公》に出演している。
一方、1969年にパリ国立オペラでトスカを、1974年にはベルリン・ドイツ・オペラでトスカとタチアナを演じ、ノルウェー国立オペラ、フィンランド国立オペラ、ハンガリー国立歌劇場などに出演を続けた。また、1975年にボリショイ劇場の米国ツアーでメトロポリタン歌劇場の舞台にも立っている。
マルク・エルムレルが指揮、夫君でテノール歌手のウラジーミル・アトラントフと共演したボリショイ劇場の1974年の《スペードの女王》の録音を含め、かつてのソ連国営「メロディア・レーベル」に録音を多く残している。1973年にソ連人民芸術家賞、1982年にはグリンカ国家賞を受賞している。
写真:Mosfilm
この記事へのコメントはありません。