訃報 〓 タマーラ・ミラシキーナ(89)ロシアのソプラノ歌手

2024/01/21

ロシアのソプラノ歌手タマーラ・ミラシキーナ (Tamara Milashkina)が1月10日、ウィーンで亡くなった。89歳だった。ソ連時代からボリショイ劇場を代表する歌手として活躍。ロシアの歌手として初めてミラノ・スカラ座に出演した他、ヨーロッパ各地の歌劇場に出演を重ねて国際的な活躍を続けた。

ロシア南部、カスピ海に近いアストラハンの生まれ。1958年にボリショイ劇場のメンバーとなり、1989年まで劇場を代表するソプラノ歌手の一人として活躍した。1961年から1962年にかけてスカラ座のオペラ・スタジオに留学。ジャナンドレア・ガヴァッツェーニ指揮のヴェルディ《レニャーノの戦い》にリディア役で出演して、スカラ座の舞台に立ったソ連初のソプラノ歌手となった。

当たり役は、チャイコフスキーの《スペードの女王》のリーザ、《エフゲニー・オネーギン》のタチアーナ、プロコフィエフ《戦争と平和》のナターシャで、スカラ座への出演はその後も続き、1964年の《スペードの女王》と《戦争と平和》、1973年の《エフゲニー・オネーギン》とボロディン《イーゴリ公》に出演している。

一方、1969年にパリ国立オペラでトスカを、1974年にはベルリン・ドイツ・オペラでトスカとタチアナを演じ、ノルウェー国立オペラ、フィンランド国立オペラ、ハンガリー国立歌劇場などに出演を続けた。また、1975年にボリショイ劇場の米国ツアーでメトロポリタン歌劇場の舞台にも立っている。

マルク・エルムレルが指揮、夫君でテノール歌手のウラジーミル・アトラントフと共演したボリショイ劇場の1974年の《スペードの女王》の録音を含め、かつてのソ連国営「メロディア・レーベル」に録音を多く残している。1973年にソ連人民芸術家賞、1982年にはグリンカ国家賞を受賞している。

写真:Mosfilm





関連記事

  1. 訃報 〓 フランツ・バルトロメイ(76)オーストリアのチェロ奏者 / ウィーン・フィルの元首席奏者

  2. サンクト・ペテルブルク発 〓 セーゲルスタムがサンクトペテルブルク響の首席客演指揮者に

  3. 訃報 〓 ユーリ・テミルカーノフ(84)ロシアの指揮者

  4. モスクワ発 〓 ワシリー・ペトレンコがスヴェトラーノフ記念ロシア国立響の芸術監督を辞任

  5. ノボシビルスク発 〓 トーマス・ザンデルリングがノボシビルスク・フィルを辞任、ロシアのウクライナ侵略で

  6. 訃報 〓 ガリーナ・ピサレンコ(88)ロシアのソプラノ歌手

  7. モスクワ発 〓 ボリショイ劇場の新シーズンは9月開幕、ネトレプコ出演の《ドン・カルロ》で

  8. 訃報 〓 レナータ・スコット(89)イタリアのソプラノ歌手

  9. モスクワ発 〓 ゲルギエフがボリショイ劇場の総監督に就任

  10. 訃報 〓 飯守泰次郎(82)日本の指揮者

  11. 訃報 〓 ロバート・ヘイル(90)米国のバス・バリトン歌手

  12. モスクワ発 〓 ヴァシリー・ペトレンコがスヴェトラーノフ記念ロシア国立響の芸術監督に

  13. ペルミ発 〓 クルレンツィス&ムジカ・エテルナのベートーヴェン交響曲第1弾が登場

  14. モスクワ発 〓 ユロフスキがスヴェトラーノフ記念ロシア国立交響楽団との契約を延長

  15. 訃報 〓 エディト・パイネマン(85)ドイツのヴァイオリニスト

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。