指揮者の小澤征爾(Ozawa Seiji)が6日、心不全のため東京都内の自宅で亡くなった。88歳だった。米国のボストン交響楽団やウィーン国立歌劇場の音楽監督を歴任するなど国際的に活躍、国内では新日本フィルハーモニー交響楽団の「桂冠名誉指揮者」、水戸室内管弦楽団の音楽顧問、長野県松本市の音楽祭「セイジ・オザワ松本フェスティバル」の総監督を務めた。2008年には文化勲章を受章している。
旧満州国・奉天(現在の長春)生まれ。歯科医師で満洲国協和会創設者の一人だった父の小澤開作の三男として生まれ、父の同志で満洲事変を主導した陸軍軍人、板垣征四郎と石原莞爾から一字ずつ貰って「征爾」と命名された。6歳まで満州で過ごしている。
戦後、帰国して1951年に成城学園高校に進んだが、齋藤秀雄が主催する音楽教室に入門したことから、翌年に齋藤の肝煎りで設立された桐朋女子高校音楽科へ第1期生として入学。1955年からは、齋藤が教授を務める桐朋学園短期大学で学んだ。
1958年、「フランス政府給費留学生」の試験に不合格となるも、持ち前の行動力を発揮して、成城学園時代の同級生の父である水野成夫たちの援助で渡欧資金を調達。スクーター、ギターを持って貨物船に乗せてもらう手はずを整え、フランスに渡った。その経験は後に『ボクの音楽武者修行』という著作にまとめられている。
翌年、第9回「ブザンソン国際指揮者コンクール」で第1位を獲得して一躍注目を集める。さらにその翌年、コンクールの審査員だった指揮者のシャルル・ミュンシュが音楽監督を務めるボストン交響楽団が毎夏開催しているタングルウッド音楽祭に参加。それがきっかけとなり、1961年にはレナード・バーンスタイン率いるニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団の副指揮者に抜擢され、来日公演にも同行した。
その1961年にはNHK交響楽団の指揮者にも就任。しかし、メンバーとの感情的な対立が翌年になって噴出、オーケストラが演奏会をボイコットするという前代未聞の事態に陥ったことで、指揮者を辞任して渡米、新天地での活路を見出すことに。
米国では1964年、シカゴ交響楽団が主催するラヴィニア音楽祭の音楽監督に急きょ抜擢され、その成功でその名が全米に広まり、その年にカナダのトロント交響楽団の音楽監督に就任(ー1968)。1966年にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を初めて指揮。1970年にはサンフランシスコ交響楽団の音楽監督(ー1976)、タングルウッド音楽祭の音楽監督にも就任と、急速に活動の場が広がる。
一方、日本でも、1972年にフジ・サンケイグループが日本フィルハーモニー交響楽団を解散させると、同門の指揮者・作曲家の山本直純らと日本フィルの楽団員を核にして自主運営のオーケストラとしての新日本フィルハーモニー交響楽団の創立に奔走した。
大きな転機となったのは、38歳だった1973年に名門ボストン交響楽団の第13代音楽監督に就任したこと。音楽監督は2002年まで、例をみない30年近く務めた。その功績を讃えて、タングルウッド音楽祭の会場には「セイジ・オザワ・ホール」が建設されている。
1984年には、恩師である齋藤秀雄の没後10年を偲び、小澤と同門の先輩である指揮者の秋山和慶の呼びかけで、齋藤門下生100名以上が集まり、「齋藤秀雄メモリアル・コンサート」が行われ、それが後に「サイトウ・キネン・オーケストラ」結成のきっかけとなった。1992年からは音楽監督を引き受けている。
1998年の長野オリンピックでは、開会式会場と世界5大陸の都市(北京、ニューヨーク、シドニー、ベルリン、ケープタウン)を結んで衛星中継された《第九》を指揮。2002年1月、日本人指揮者として初めてウィーン・フィルの「ニューイヤーコンサート」を指揮。その秋、ウィーン国立歌劇場音楽監督に就任した(ー2007)。
しかし、2005年暮れから体調を崩し、2006年には、帯状疱疹、慢性上顎洞炎、角膜炎と診断され、ウィーンでの活動を一時休止。その後、活動を再開したが、2007年にはウィーン国立歌劇場の音楽監督を退任した。
2008年に文化勲章を受章。しかし、2010年に食道がんが見つかり、食道全摘出手術を受け、2011年には悪化した腰の手術を受けるなど、活動が徐々に少なくなったが、2015年に松本市の音楽祭「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」は「セイジ・オザワ松本フェスティバル」として再スタートを切っている。
2015年には、日本人では初の受賞となるケネディ・センター名誉賞を受賞。2016年には指揮したラヴェルの歌劇《こどもと魔法》のアルバムが第58回「グラミー賞:最優秀オペラ録音賞を受賞した他、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団から「名誉団員」の称号を贈られていた。
写真:Medici.tv
訃報 〓 小澤征爾(88)日本の指揮者
2024/02/10
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