フィレンツェ発 〓 フィレンツェ歌劇場のペレイラ総裁が突然の辞任、横領問われて「気力失った」

2023/03/02
【最終更新日】2023/03/03

フィレンツェ歌劇場のアレキサンダー・ペレイラ(Alexander Pereira)総裁が2月27日付で突然辞任、オペラ界に激震が走っている。辞任の理由については声明を発表し、昨年末に体調を崩し、もう続ける気力を失ったとしている。2019年からその任にあるが、昨年5月に劇場のクレジットカードを個人的な支払いに使った横領を指摘され、本人も今年に入って当局の捜査を受けていることを明らかにしていた。

横領と指摘されたのは、イビサ島のレストランや肉屋、八百屋などに対する支払い。2021年の6万ユーロ(約870万)、2022年1月から5月にかけての1万4000ユーロ(約203万)の支払いは本来は個人で払うべきものであり、劇場の経費を使ったのは横領に当たる、とされた。その後、右派政党「イタリアの同胞」の地元選出議員がトスカーナ州議会、フィレンツェ市議会で取り上げる騒ぎに発展した。

ペレイラはウィーン生まれの75歳。父親はオーストリアの外交官で、タイプライターのオリベッティ社のベルリン支店長などを務めた後、音楽マネージメントに転身し、チューリヒ歌劇場の総監督(1996-2012)、ザルツブルク音楽祭の総監督(2012-2014)、ミラノ・スカラ座の総裁(2013-2019)を歴任してきたヨーロッパ・オペラ界の大立て者の一人として知られる。

声明では「非常に困難な仕事を抱えていることに加え、常に劇場内と外から、特に報道陣から攻撃されています。このような状況で、私は20キロも体重を落とし、12月初旬に危機的状況に陥りました」と告白。「フィレンツェでのこの経験があまりにも悲しいものとなり、もう続ける気力を失った」と述べている。

2月9日には捜査を担当する検事による証人喚問も行われたと報じられているが、市長がトップを務める財団の理事会は辞任を伝えたペレイラに対して「感謝の意を表するとともに、コロナ禍によって中断を余儀なくされた最高品質の芸術作品の復活を軌道に乗せた功績を高く評価したい」との声明を出し、もう30日間その職に留まることを求める決議を行ったという。

写真:Teatro del Maggio


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