ブラティスラヴァ発 〓 ミハイル・プレトニョフが新しいオーケストラを創設、ロシア・ナショナル管の音楽監督を当局が解任?

2022/09/18
【最終更新日】2022/09/19

ロシア・ナショナル管弦楽団(Russian National Orchestra)がオーケストラの創設者で長く芸術監督を務めてきたミハエル・プレトニョフとの契約を解除したと発表した。オーケストラは「2020年末以降、オーケストラとの間に実質的に創造的な接触がない」と述べているが、プレトニョフを長年支えてきた楽団長も先月更迭されており、ロシア当局による事実上の解任とみられる。

プレトニョフは旧・ソ連アルハンゲリスク生まれの65歳。1978年の第6回「チャイコフスキー国際コンクール」のピアノ部門優勝というトップ・ピアニストとして華々しい活躍を続けていた1990年、旧・ソ連崩壊後のロシア初の民間資本によるオーケストラとしてロシア・ナショナル管弦楽団を創設して話題をさらった。

ロシア・ナショナル管弦楽団は豊かな資金力で優秀な演奏家を集めたこともあって、設立当初から国際的に注目を集め、演奏会だけでなく、プレトニョフ本人が専属契約を結ぶ老舗レーベル「ドイツ・グラモフォン」などへの録音など、旺盛な活動を展開してきた。

海外公演も多く、米国では定例演奏会を開催。ロシアのオーケストラとしては初めて、ローマ教皇に御前演奏を行ない、イスラエルでの演奏も実現。米国の音楽賞「グラミー賞」受賞もロシアのオーケストラ初という栄誉に輝いている。

また、2004年にはケント・ナガノの指揮で、ミハイル・ゴルバチョフ、ビル・クリントンという米ソの元大統領、女優のソフィア・ローレンを朗読に起用したプロコフィエフの《ピーターと狼》のアルバムを製作するといった話題を提供してきた。

ただ、2020年に入ってプレトニョフの影が薄くなり、本人は2021年になって市民権を持つスイスに出国。その動きをめぐり、当局と何かあったのではないかと憶測を呼んだが、2月に始まったロシアによるウクライナ侵略についても沈黙を守っていたことから、その去就に注目が集まっていた。

そこに先週、クロアチアのジャーナリストによるインタビューが公になり、今回の退任劇の背景が明らかに。インタビューは2009年から州政府の支援を受けるようになって当局の統制が強まっていたことをうかがわせる内容で、プレトニョフは「モスクワの音楽家たちから切り離された」と、自分からオーケストラから離れたわけではないことを強調している。

一方、新たな活動の場として、スロヴァキアの首都ブラティスラヴァを拠点に新しいオーケストラを創設したことも明らかに。かねてから影響を受けたとしていた作曲家の名前を戴いた「ラフマニノフ国際オーケストラ」で、古巣から18人が参加、そこにスロヴァキア、オーストリア、ウクライナの演奏家が加わっているという。

演奏会に先立ち、チャイコフスキーのバレエ《白鳥の湖》組曲、今年90歳の誕生日を迎えるシチェドリンのバレエ《カルメン》組曲の録音を済ませ、発売を待っているところだという。

写真:Russian National Orchestra


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