ボストン発 〓 フィリップ・グラスが「ドナルド・ケネディ・センター」を拒絶、代わってボストン響が新作を世界初演

2026/03/08

ボストン交響楽団が米国を代表する現代音楽の作曲家フィリップ・グラス(Philip Glass)の新作、交響曲第15番《リンカーン》の世界初演を行うと発表した。15番は元々、アメリカ合衆国建国250年を記念してワシントンD.C.の「ケネディ・センター」と座付きオーケストラのナショナル交響楽団が共同委嘱した作品。しかし、「ケネディ・センター」が「ドナルド・ケネディ・センター」に改名されたことにグラスが反発、初演を拒否していた。

作品は8楽章構成。初演はオーケストラが主宰する夏の音楽祭「タングルウッド音楽祭」で7月5日に行われる。指揮はグラス作品を数多く手掛けてきたカレン・カメンセクで、バリトン歌手のザカリー・ジェームズが出演する。また、コンサートでは、コープランド作曲の《リンカーンの肖像画》1942年版、スティーヴン・スピルバーグ監督の2012年の映画『リンカーン』のためにジョン・ウィリアムズが書いた音楽からの抜粋が一緒に演奏される。

グラスは米国ボルチモア生まれの89歳。音の動きを最小限に抑え、パターン化された音型を反復させる音楽「ミニマル・ミュージック」の旗手で、「この作品はリンカーンの肖像である。しかしいまのケネディ・センターの価値観は、この曲のメッセージと真っ向から対立している。現体制のもとこの曲の初演をすることは私の良心にもとる」と、強く反発している。

センターをめぐっては昨年末の名称の変更後に公演を中止するアーティストが相次ぎ、入場者数は通年の50%程度と低迷。さらにこの2月初め、トランプ大統領の突然の発表で、2年にわたるリニューアル工事を行うため7月4日から閉鎖されることが明らかに。専属契約を切られたワシントン・ナショナル・オペラだけでなく、ナショナル響なども新たな会場探しを余儀なくされるなど混乱が続いている。

写真;Deutsche Grammophon


関連記事

  1. ロンドン発 〓 ジョシュア・ベルがアカデミー室内管との契約を延長

  2. テルアビブ発 〓 若手歌手のための「オペラリア 2020」が中止を発表

  3. 東京発 〓 新国立劇場が2021/2022シーズンの公演ラインナップを発表

  4. ブカレスト発 〓 金川真弓が「ジョルジュ・エネスク国際コンクール」ヴァイオリン部門で優勝、第3位に木村和奏

  5. サンフランシスコ発 〓 サンフランシスコ・オペラでストライキ続く

  6. シカゴ発 〓 グラント・パーク音楽祭の芸術監督・首席指揮者にジャンカルロ・ゲレーロ

  7. モントリオール発 〓 テノールのジョセフ・カイザーが来年まで出演をキャンセル

  8. ベルリン発 〓 ドイツのオペラ雑誌「オペルンヴェルト」が「オブ・ザ・イヤー」を発表

  9. サンホセ発 〓 コスタリカ国立響の首席指揮者兼芸術監督にスペインのアンドレス・サラド

  10. 訃報 〓 リブシェ・ドマニーンスカ(96)チェコのソプラノ歌手

  11. 大津発 〓 びわ湖ホールが《神々の黄昏》を無観客公演に、同時に無料ストリーミング配信

  12. オスロ発 〓 クラウス・マケラが任期1年残してオスロ・フィルの首席指揮者を退任

  13. アムステルダム発 〓 エド・デ・ワールトに改めて「副指揮者」の称号

  14. ウィーン発 〓 アンゲリカ・キルヒシュラーガーがオペラからの引退を表明

  15. 上海発 〓 若手歌手のための「オペラリア」、2026年は上海で

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。