訃報 〓 ロディオン・シチェドリン(92)ロシアの作曲家

2025/09/01

ロシアの作曲家ロディオン・シチェドリン(Rodion Shchedrin)が29日、ドイツ・ミュンヘンの病院で亡くなった。92歳だった。旧ソビエト連邦を代表する作曲家で、7つのオペラ、5つのバレエ、3つの交響曲、14の協奏曲を作曲。1973年から1990年まで作曲家同盟の会長を務めた。10年前に亡くなった夫人のマイヤ・プリセツカヤは旧ソ連を代表するバレリーナ。

モスクワ生まれで、音楽理論家、教育者、音楽活動家を父に持つ。1941年にモスクワ音楽院付属中央音楽学校に入学したが、第二次世界大戦でサマラ、クイビシェフに疎開。1944年から1950年にかけて父親も教壇に立つモスクワ合唱学校で学び、1947年に作曲家アラム・ハチャトリアンが審査委員長を務めた生徒たちの作曲作品コンクールで最優秀賞を受賞。4年時に作曲家同盟に迎えられた。

その後、モスクワ音楽院で学び(1950ー1955)、ピアノをヤコフ・フリエルに、ヴィッサリオン・シェバリンに作曲を師事した。1958年に7歳年上のバレリーナ・マイヤ・プリセツカヤと結婚した。1960年代から旺盛な作曲活動を展開、1967年にはプリセツカヤが出演した《カルメン組曲》の成功で国際的な名声を獲得した。

また、作曲活動と並行して、ピアニストとしても活動。1965年からは音楽院で作曲を教えたが、1968年にソ連によるチェコスロヴァキアへの軍事侵攻が勃発。これを支持する書簡に署名を拒否したことから党指導部と対立し、1969年には音楽院を去った。

1970年代から1980年代にかけては、バレエ《アンナ・カレーニナ》や《かもめ》、オペラ《死んだ魂》、合唱曲、ピアノ曲などを作曲。また、1989年にシカゴ交響楽団創立100周年のために管弦楽のための協奏曲第3番《懐かしいロシアのサーカス音楽》を作曲している。その年、1989年にはソ連最高会議議員に選出されている。

日本でも、1988年に明治生命ミュージカル《12ヶ月のニーナ》、1989年にはサントリーホールに作曲委嘱された管弦楽のための協奏曲第4番《輪舞=ホロヴォード》が初演された。

しかし、1991年にプリセツカヤとドイツに移住。ミュンヘンを拠点にしながら、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ、マキシム・ベンゲロフ、ユーリ・バシュメット、オリ・ムストネンらに協奏曲を書き、国外追放されたロストロポーヴィチとその妻でソプラノ歌手のガリーナ・ヴィシネフスカヤの祖国での名誉回復に尽力した。

ソ連人民芸術家を筆頭にロシアでの受賞多数。また、世界経済フォーラム(ダボス会議)のクリスタル賞、グラミー賞といった海外の受賞も多く、国際コンクールの審査員など多くの役職を歴任している。著書に『さまざまな年のモノローグ』。2022年には30年近く暮らしたモスクワのトゥヴェルスカヤ通りのアパートを当局に寄贈。そこが現在、プリセツカヤ居室博物館となっており、シチェドリンの書斎も再現されている。

写真:Moscow Philharmonic Society


関連記事

  1. マインツ発 〓 2022年の「ロベルト・シューマン賞」はハインツ・ホリガーに

  2. ペーネミュンデ発 〓 ニューヨーク・フィルが新型コロナの世界的流行以来初の海外公演、ドイツ・ウーゼドム音楽祭に客演

  3. 訃報 〓 ハンス・ツェンダー(82)ドイツの指揮者、作曲家

  4. ベルリン発 〓 ウィーン・フィルが野外劇場「ヴァルトビューネ」デビュー

  5. 訃報 〓 ヘレナ・タッテルムスホヴァー(92)チェコのソプラノ歌手

  6. ベルリン発 〓 ベルリン・ドイツ・オペラがワーグナー《リエンツィ》をストリーミング配信

  7. ベルリン発 〓 バレンボイムの功績に対して、ベルリン州立オペラが「名誉会員」、ベルリン・シュターツカペレが史上初の「名誉首席指揮者」の称号

  8. ベルリン発 〓 ベルリン音楽祭が閉幕、5万人を超える聴衆を集める盛況。ウィーン・フィルも音楽祭デビュー

  9. 訃報 〓 フランツ・バルトロメイ(76)オーストリアのチェロ奏者 / ウィーン・フィルの元首席奏者

  10. ハンブルク発 〓 名門ホール「ライスハレ」が使っていないパイプ・オルガンを入れ替え

  11. ミュンヘン発 〓 ヤンソンス追悼演奏会はメータが指揮

  12. ミュンヘン発 〓 「オペラ・アワード2024」の授賞式がプリンツ・レゲンテン劇場で

  13. バーデン=バーデン発 〓 復活祭音楽祭の開催を断念

  14. ザールブリュッケン発 〓 ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルの首席指揮者にジュゼップ・ポンス

  15. ミュンヘン発 〓 補償の必要ないとミュンヘン市政府の法律顧問、ゲルギエフ解任で

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。