訃報 〓 ジョゼ・ヴァン・ダム(85)ベルギーのバス・バリトン歌手

2026/02/20

ベルギーのバス・バリトン歌手ジョゼ・ヴァン・ダム(José van Dam)が2月17日に亡くなった。85歳だった。巨匠指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤンに見出されたことで国際的に活躍、オペラの一方、コンサート、オラトリオ、リートの歌手としても活躍した。

首都ブリュッセル近郊イクセルの生まれ。本名はジョゼフ・ヴァン・ダム(Joseph van Damme)で、17歳でブリュッセルの王立音楽院に入学、フレデリック・アンスパシュに学んで首席で卒業した。1960年、リエージュのワロン王立歌劇場でロッシーニ《セビリアの理髪師》のドン・バジリオ役でオペラ・デビューを果たした。

翌年にはパリ国立オペラと契約。5年間在籍する中で、ビゼーの『カルメン』のエスカミーリョ役で初の主要役を演じた。パリの後、ジュネーブ大剧院に2年間所属。1967年にはロリン・マゼール招かれてベルリン・ドイツ・オペラに移籍した。

大きな転機は20世紀を代表するスター指揮者のカラヤンに見出されたこと。1968年にザルツブルク音楽祭にデビューしてから出演を重ね、カラヤンとはドン・フェルナンド、フィガロ、ゴロー、アムフォルタスなどを歌い、その存在感を確固たるものにした。その後、世界の著名な歌劇場、国際的な音楽祭への出演を重ねた。

ベルリンには1973年まで在籍、1974年には「宮廷歌手」の称号が贈られている。1983年にはパリ国立オペラでメシアン《アッシジの聖フランチェスコ》の世界初演に参加、小澤征爾の指揮でタイトルロールを歌っている。1992年にザルツブルク音楽祭で、ピーター・セラーズの演出によって上演されたプロダクションでも称賛を浴びた。

オペラの一方、コンサート、オラトリオ、リートの歌手としての評価も高い。また、1988年にはジェラール・コルビオ監督の映画『仮面の中のアリア』に年老いたオペラ歌手の役で主演、その演技も評判を集めた。1998年にはアルベール国王から男爵の称号を授与され、1999年のフィリップ皇太子の結婚式でも演奏を披露している。

残された録音も膨大で、カラヤンとはモーツァルト《魔笛》、ベートーヴェン《フィデリオ》、ヴェルディ《ドン・カルロ》、ドビュッシー《ペレアスとメリザンド》、ワーグナー《パルジファル》などで共演している。

また、カラヤン以外とも、ゲオルグ・ショルティとのワーグナー《ニュルンベルクのマイスタージンガー》やリヒャルト・シュトラウス《影のない女》、ミシェル・プラッソンとのグノー《ファウスト》やマスネ《ドン・ キショット》、小澤とのメシアン《アッシジの聖フランチェスコ》などの名録音がある。

2010年、ブリュッセルの王立モネ劇場の《ドン・キショット》に出演してオペラの舞台から引退。翌年からエリザベート王妃音楽院で後進の指導に当たっていた。国際的な受賞も多数あり、2024年には「オペラ・アワード2024」でも永年功労賞を受賞している。

写真:Nomi Baumgartl





関連記事

  1. 訃報 〓 ランド・バルトリーニ(87)イタリアのテノール歌手

  2. 訃報 〓 ロベルタ・アレクサンダー(76)米国のソプラノ歌手

  3. 訃報 〓 小澤征爾(88)日本の指揮者

  4. リエージュ発 〓 指揮者のスペランツァ・スカップッチがワロン王立オペラの音楽監督を退任

  5. 訃報 〓 エンリケ・バティス(82)メキシコの指揮者

  6. 訃報 〓 ゲイリー・グラフマン(92)米国のピアニスト

  7. ブリュッセル発 〓 モネ劇場の新しい《ニーベルングの指環》全4部作上演で演出家が交代、ロメオ・カステルッチからピエール・アウディへ

  8. 訃報 〓 メナヘム・プレスラー(99)米国のピアニスト

  9. 訃報 〓 ステファン・グールド(61)米国のテノール歌手

  10. 訃報 〓 ハラルド・セラフィン(93)オーストリアのバリトン歌手

  11. 訃報 〓 オリアンナ・サントゥニオーネ(93)イタリアのソプラノ歌手

  12. 訃報 〓 ヴィクトル・アヴィア(42)フランスのオーボエ奏者

  13. 訃報 〓 アルトゥール・モレイラ・リマ(84)ブラジルのピアニスト

  14. 訃報 〓 スチュアート・バロウズ(92)英国のテノール歌手

  15. 訃報 〓 ヤヌシュ・オレイニチャク(72)ポーランドのピアニスト

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。