訃報 〓 イングリッド・ヘブラー(93)オーストリア出身のピアニスト

2023/05/16

オーストリア出身の女性ピアニスト、イングリッド・ヘブラー(Ingrid Haebler)が14日、93歳で亡くなった。バッハからストラヴィンスキーまで幅広いレパートリーを持ち、気品に満ちたモーツァルトの演奏で高い評価を獲得していた。1966年以来、毎年のように来日して日本にもファンが多かった。

1929年、ウィーンの生まれ。ポーランド人の両親に連れられて生後3週間でポーランドに移住、第二次世界大戦が始まると、一家はザルツブルクに移ってモーツァルテウム音楽院に進んだ。その後、ウィーン音楽院でパウル・ヴァインガルテンに、さらにジュネーヴ音楽院ではニキタ・マガロフに、パリではマルグリット・ロンに師事して研鑚を積んだ。

1952年と1953年のジュネーヴ国際音楽コンクールで第2位、1954年のミュンヘン国際音楽コンクール、ウィーン国際シューベルト・コンクールで第1位を獲得した。またこの年、ザルツブルク音楽祭でモーツァルトのピアノ協奏曲第12番を弾いて正式デビュー、国際的な演奏活動をスタートさせた。

虚飾を排した演奏で知られ、「ピュリスト=純粋主義者」とも呼ばれた。幅広いレパートリーの中でもモーツァルトの気品に満ちた演奏は高く評価され、1960年代にモーツァルトのピアノ作品全集を録音、1980年代後半から91年にかけて再びピアノ・ソナタ全集を再録音している。

ピリオド楽器に取り組んだ草分けの一人としても知られ、1960年代にエドゥアルト・メルクス指揮のカペラ・アカデミカ・ウィーンとフォルテピアノによるバッハの鍵盤協奏曲を録音している。残された録音も多く、ヴァイオリニストのヘンリク・シェリングと共演したモーツァルトやベートーヴェンの録音も名録音の誉れ高い。

写真:Universal Music


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