英国の指揮者ロジャー・ノリントン(Roger Norrington)が18日に亡くなった。91歳だった。ピリオド楽器による演奏を駆使して、古典からロマン派の作品に新しい光を投げかけたことで知られた、古楽界のパイオニアの一人。
オックスフォード生まれで、オックスフォード大学副総長の息子として育つ。長じてケンブリッジ大学クレア・カレッジで英文学を専攻し、カレッジの聖歌隊に所属。その後、王立音楽院でエイドリアン・ボールトに指揮を学んだ。
卒業後はテノール歌手としての活動を経て、1962年にシュッツ合唱団(後のロンドン・シュッツ合唱団)を設立。1969年になって、新設されたケント・オペラの音楽監督に就任、1984年に退任するまで実験的な試みに挑戦したことで話題を集めた。
その後、1975年にオリジナル楽器によるロンドン・バロック・プレイヤーズ(後のロンドン・クラシカル・プレイヤーズ)を設立、個性的な録音を数多く残している。
1990年代に入って白血病に冒されたが、米国で代替療法を受けて現場復帰。ただ、ロンドン・クラシカル・プレイヤーズは1997年に解散、エイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団に吸収合併された。
また、1998年から2011年にかけてドイツのシュトゥットガルト放送交響楽団の首席指揮者を務め、メトロノーム指定に忠実に従った速いテンポとノン・ヴィブラート奏法の組み合わせによって紡ぎ出される斬新な響きを活かしたベートーヴェンの交響曲全曲の演奏などで話題をさらった。
その後、2011年から2015年にかけてチューリッヒ室内管弦楽団の首席指揮者。2021年11月18日に英国のロイヤル・ノーザン・シンフォニアを指揮したのを最後に指揮活動から引退していた。1980年に大英帝国勲章オフィサー章(OBE)、1990年にコマンダー章(CBE)、1997年にナイト・バチェラーに叙されている。
写真:Manfred Esser
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