訃報 〓 グラハム・クラーク(81)英国のテノール歌手

2023/07/08

英国を代表するテノール歌手、グラハム・クラーク(Graham Clark)が7日に亡くなった。81歳だった。ワーグナー《ニーベルングの指環》のローゲやミーメ、ベルク《ヴォツェック》の大尉といった性格俳優的な役柄で国際的に活躍。ここ数ヶ月、がんと闘っていた。

ランカシャーのリトルボロー生まれで、ロングボロー教育大学、ロングボロー大学を卒業。体育教師を数年務めた後、大学院で学び、スポーツ・カウンシルのシニア・リージョナル・オフィサーを経て、改めて声楽の道に進んだ。

1975年、スコティッシュ・オペラでオペラのキャリアをスタート。その年、台風で壊滅的な被害を受けたオーストラリア・ダーウィンを支援するため、ロイヤル・オペラで行われたチャリティ・コンサートに出演、ジョーン・サザーランドらと共演して注目された。

その後、1978年から1985年までイングリッシュ・ナショナル・オペラのプリンシパル・アーティストを務め、性格俳優的な役柄を中心に国際的な活躍を続けた。メトロポリタン歌劇場にも82回出演、リヒャルト・シュトラウスの《サロメ》や《ナクソス島のアリアドネ》、ベルクの《ヴォツェック》や《ルル》などに出演を重ねた。

また、ドイツのバイロイト音楽祭にも出演を重ね、1980年代末から1990年代初めに上演されたハリー・クプファー演出、ダニエル・バレンボイム指揮の《ニーベルングの指環》のローゲとミーメ役で強い印象を残した。ローゲとミーメは275回以上歌っている。

2019年に引退するまで幅広い活躍を続け、1986年の《独裁者ファウスト》などでローレンス・オリヴィエ賞に3度ノミネートされた他、1991年のメトロポリタン歌劇場で初演されたジョン・コリリアーノの《ベルサイユの亡霊》ではエミー賞にノミネートされている。

写真:Groves Artists


関連記事

  1. ジュネーブ発 〓 ジュネーブ国際コンクールのフルート部門はエストニア出身のエリザヴェータ・イヴァノヴァが優勝

  2. リンツ発 〓 マルクス・ポシュナーがブルックナー管の首席指揮者を2026/2027シーズンで退任

  3. ニューヨーク発 〓 ニューヨーク・フィルがネット上で「マーラー・デジタル・フェスティバル」

  4. 訃報 〓 テレサ・ベルガンサ(89)スペインのメゾ・ソプラノ歌手

  5. ニューヨーク発 〓 メトロポリタン歌劇場がゲルブ総裁との契約を延長

  6. フィレンツェ発 〓 フィレンツェ歌劇場のペレイラ総裁が突然の辞任、横領問われて「気力失った」

  7. ドレスデン発 〓 名指揮者ケンペの遺品が古巣のザクセン州立歌劇場へ

  8. ニューヨーク発 〓 ニューヨーク・フィルがトゥガン・ソヒエフの出演をキャンセル

  9. ロンドン発 〓 レザール・フロリサンが創立40周年ツアー

  10. プラハ発 〓 プラハ国立歌劇場がリニューアル・オープン

  11. ハンブルク発 〓 州立オペラが2025/2026シーズンの公演ラインナップを発表

  12. ポズナン発 〓 ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールは2022年にスライド

  13. ロンドン発 〓 英国がイングランド全域で厳しいロックダウンを再導入

  14. ヘルシンキ発 〓 ヘルシンキ・フィルの次期首席指揮者にユッカ=ペッカ・サラステ

  15. 静岡発 〓 プロ・オーケストラ「富士山静岡交響楽団」が発足、静岡交響楽団と浜松フィルの合併で

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。