英国のメゾ・ソプラノ歌手ジョセフィン・ヴィージー(Josephine Veasey)が22日、ホイットチャーチの自宅で亡くなった。91歳だった。英国の戦後第一世代を代表する歌手の一人で、国際的に活躍。ワーグナーやリヒャルト・シュトラウス、ベルリオーズの作品などを得意とした。
1930年、ロンドン南部ペッカムの生まれ。1949年にロイヤル・オペラの合唱団に加わり、1955年にリヒャルト・シュトラウス《サロメ》でオペラ・デビュー。1957年からはグラインドボーン音楽祭にもデビュー、《ウエルテル》のシャーロット、《薔薇の騎士》のオクタヴィアンなどで出演を重ねた。
持ち役はケルビーノ、ドラベッラ、エボリ皇女、アムネリス、カルメンなど。ベルカント・オペラでは、ジョーン・サザーランド、ルチアーノ・パヴァロッティと共演した《テンダのベアトリス》でアグネーゼを、モンセラート・カバリエ、ジョン・ヴィッカーズと共演した《ノルマ》でアダルジーザを歌っている。
また、音楽監督を務めるゲオルグ・ショルティに認められてワーグナー作品に取り組むようになり、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮の《ニーベルングの指環》の録音にフリッカ役で参加している。一方、ショルティの後継者コリン・デイヴィスとはベルリオーズの作品に取り組み、《トロイアの人々》のディド、《ファウストの劫罰》のマルグリートを持ち役とした。
ロイヤル・オペラ以外にパリ国立オペラやスカラ座、ウィーン国立歌劇場やメトロポリタン歌劇場など、世界の主要な歌劇場に出演しており、1962年にはマイケル・ティペット《プリアモス王》、1976年にはハンス・ヴェルナー・ヘンツェの《私たちは川に来た》などの初演に参加している。
オペラの舞台から引退したのは1982年で、デビュー時と同じロイヤル・オペラの《サロメ》の公演で、ヘロディアスを歌った。引退後は後進の指導に尽力。サリー・バージェス、フェリシティ・パーマー、アリソン・ピアスといった歌手たちを育てた。
写真:Royal Opera House
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