通行人を装った音楽達が突然集まってきてパフォーマンスを繰り広げる「フラッシュモブ」ー。指揮者のサイモン・ラトル(Simon Rattle)が8日、ミュンヘンのヴェルクスフィアテル地区の大観覧車の横でバイエルン州の音楽家たちと「フラッシュモブ」を敢行、新しいホールの早期建設を求めた。
ラトルが早期建設を求めたのは、バイエルン放送交響楽団の新しい本拠地として構想されたホール。オーケストラの首席指揮者を務め、在任中の2019年12月に亡くなったマリス・ヤンソンスが切望していたもので、建設案は2021年にバイエルン州政府に承認されていた。ヴェルクスフィアテル地区はミュンヘンの東駅近くの工場地帯で、その予定地。
承認されたプランでは、新ホールは1900人収容の大ホール、400人収容の小ホール、200人収容のマルチメディアのためのホールという3部構成。設計はオーストリア・ブレゲンツの「Cukrowicz Nachbaur Architekten」社で、音響設計は永田音響設計の豊田泰久氏が担当することが決まっていた。
しかし、コロナ禍を経て建設計画は暗転。ミュンヘン市は現在、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の本拠地である文化センター「ガスタイク」を全面改修中で、工事中の代替ホール「イザール・フィルハーモニー」もオープンしたこともあり、市は新ホールの工事開始を2025年まで延期すると発表。バイエルン州政府のマルクス・ゼーダー首相も「再考するための休み」と発言して計画の変更を示唆していた。
この動きに対して、ヤンソンスの後を受けて2023/2024シーズンから首席指揮者に就任するラトルは危機感を強め、有力紙「フランクフルター・アルゲマイネ」のインタビューに「ミュンヘンは音楽都市で唯一、まともに演奏できるホールがない街になってしまう」と早期建設を促していた。
今回の「フラッシュモブ」には、バイエルン放送交響楽団から、バイエルン州立ユース・オーケストラ、バイエルン州内のアマチュア演奏家まで参加。映画『スター・ウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』のテーマを演奏して、新ホールの必要性をアピールしたという。
写真:Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks / Urkern / Ivana Bilz
ミュンヘン発 〓 ラトルが新ホール建設求め、バイエルン州の音楽家たちと「フラッシュモブ」
2022/07/14
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