訃報 〓 シルヴァーノ・ブッソッティ(89)イタリアの作曲家

2021/09/20
【最終更新日】2023/02/06

イタリアの作曲家シルヴァーノ・ブッソッティ(Sylvano Bussotti)が亡くなった。89歳だった。音列作法、図形楽譜を使った偶然性の音楽といった多彩な作風で1960年代の前衛音楽の作曲家として活躍する一方、ピアニスト、画家、デザイナー、作家、詩人、映画監督、俳優、イラストレーター、舞台監督、振付師、演出家など、マルチな才能を発揮したことで知られる。

フィレンツェ生まれで、ケルビーニ音楽院で学んだ後、パリに渡ってマックス・ドイッチュに師事。ピエール・ブーレーズらと親しく交流、ジョン・ケージの偶然性の音楽に大きく影響された。その後、ダルムシュタット夏季現代音楽講習会の常連になり、1959年に発表した「D.チューダーのための五つのピアノ曲」で注目を集めた。

1961年の《トルソ》、1963年の《イル・ヌード》が国際現代音楽協会のコンクールに立て続けに入賞。その後、協和音程の多いロマンティックな詩情を漂わせる作風、退廃的で甘美な音色美で強烈な官能性を放射する音楽を生み出し、音符の形が枝状になる新しい記譜法などによって一世を風靡した。

一方、左翼文化人を代表する一人で、ゲイ文化を象徴する存在としても名を馳せた。舞台作品の創作に熱心で、作曲から上演に至るまでのすべてを手掛ける多彩な才能をみせた。一時期、ヴェネチアのフェニーチェ劇場の芸術監督を務めていた。

ローマで交流のあった作曲家の武満徹との親交も深く、武満はブソッティの誕生日のためにギターの小品を作曲している。また、その招待で初来日。1987年には、サントリーホールが作曲を委嘱した《カタログ IV オーケストラのための詩 第1番 “H III”》が日本で初演されている。

写真:Il Messaggero


    もっと詳しく ▷











関連記事

  1. ブリュッセル発 〓 モネ劇場が《薔薇の騎士》を無料ストリーミング

  2. ウィーン発 〓 ネトレプコが右肩の緊急手術で国立歌劇場への出演をキャンセル。一方で「ポーラー音楽賞」授賞、初めての著作刊行、5年ぶりのソロ・アルバムが登場

  3. ユトレヒト発 〓 第12回「フランツ・リスト国際ピアノ・コンクール」で日本の黒木雪音が優勝

  4. ダラス発 〓 ダラス交響楽団がルイージの指揮でメトロポリタン歌劇場管弦楽団と合同コンサート

  5. ドレスデン発 〓 ザクセン州立歌劇場が2020/2021シーズンの公演をキャンセル

  6. ロンドン発 〓 アントニオ・パッパーノ、ロンドン交響楽団の首席指揮者へ

  7. ロサンゼルス発 〓 ロサンゼルス・オペラが2022/2023シーズンの公演ラインナップを発表

  8. グロッセート発 〓 第1回「セルゲイ・クーセヴィツキー国際指揮者コンクール」で出口大地が最高位

  9. ベルン発 〓 スイスの劇場閉鎖、2月末まで延長の方向

  10. パリ発 〓 フランスの夏の音楽祭も相次いで中止を発表

  11. 東京発 〓 指揮者の小林研一郎にハンガリーの最高位の勲章「大十字功労章」

  12. ロサンゼルス発 〓 第62回「グラミー賞」決まる

  13. ウィーン発 〓 ウィーン国立歌劇場など、オーストリアの劇場閉鎖は3月末までに延長

  14. バニング発 〓 アナログ・レコード人気に打撃、ラッカー盤製造メーカーの工場が全焼

  15. ゲイツヘッド発 〓 ノリントンが王立ノーザン・シンフォニアを指揮して引退コンサート、ライブ・ストリーミングも

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。