BBCプロムス 〓 最終日の「ルール・ブリタニア」などの歌詞なし演奏めぐり論争勃発

2020/08/28

ロンドンの夏の音楽祭として知られるBBC(英国放送協会)主催の「BBCプロムス」をめぐり、英国で論争が勃発した。最終日「ラスト・ナイト」で例年会場の聴衆によって歌われてきた「ルール・ブリタニア」と「希望と栄光の国」について、BBCが今年は歌詞なしで演奏すると発表したことが原因。ジョンソン首相を巻き込んでの論争に発展している。

今年の「BBCプロムス」は、新型コロナウイルスの英国での感染拡大を受け、期間を大幅に短縮、「ラスト・ナイト」は9月12日に無観客で行われる。このため、会場の観客が国旗を打ち振っての大合唱はそもそもない。ところが24日、BBCが2曲について「歌詞なしでの演奏」を明らかにしたことで論争に火が着いた。

BBCの決定は、人種差別抗議デモの世界的な広がりを意識したもので、声明で2曲について「帝国主義的」、「植民地主義的」との批判が出ていると説明。「イベントの伝統や精神を尊重しながら、非常に異例な現下の状況に適応する」とした。一方で新たに応援歌の「ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン」をプログラムに加えた。

ただ、今年の指揮者フィンランドのダリア・スタセヴスカがBLM運動(=ブラック・ライヴズ・マター=黒人の生命も大切だ)の熱烈な支持者であるためか、彼女が「歌詞なし」をねじ込んだという話が出回ったこともあり、まず文化担当大臣が「歌詞なし」に懸念を表明。さらに首相が「信じられない。我々は自らの歴史や伝統、文化に対して恥じらうのをやめるべき」と批判する事態に発展した。

「ルール・ブリタニア」の歌詞には「統べよ、ブリタニア。大海原を統べよ。英国民は断じて奴隷にはならない」という部分があり、エルガーの有名な行進曲「威風堂々」のサビの部分に歌詞を付けた「希望と栄光の国」も、大英帝国の栄光を高らかに歌い上げた愛国的な内容になっている。

その内容に対して、「歌詞なし」反対派は「大英帝国の団結を促したもので奴隷制を賛美するものではない」と主張、賛成派は「大英帝国の植民地政策やそこから生じた奴隷制を肯定したもので公共放送で取り上げるのは不適当」と主張している。また、首相による批判に対して、政府の言論の自由への介入という意見も飛び出している。

写真:BBC Proms


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