訃報 〓 レオン・フライシャー(92)米国のピアニスト

2020/08/04
【最終更新日】2023/02/06

米国のピアニスト・指揮者のレオン・フライシャー(Leon Fleisher)が2日、ボルチモア病院で亡くなった。92歳だった。がんの治療を受けていたが、長く教壇に立ってきたピーボディ音楽院では先週までマスター・クラスで教えていたという。

1928年、サンフランシスコの生まれ。東欧ユダヤ系移民の家系で、父親は帽子作りの職人だった。息子を一流のピアニストにという母親の強い希望の下、4歳でピアノを始め、8歳でデビュー。その後、アルトゥール・シュナーベルに師事した。

その後、16歳でピエール・モントゥー指揮のニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団と共演。1952年にはベルギーのエリザベート王妃国際音楽コンクールで米国人として初の優勝を飾り、華々しい活躍を開始した。しかし1965年、「ジストニア=局所的筋失調症」を患い、右手に麻痺と変形が起きて演奏活動を休止した。まだ37歳の若さだった。

以後、ラヴェルの左手のための協奏曲など、左手のスペシャリストとして活動するかたわら、ピーボディ音楽院で教鞭を執り、指揮活動にも進出。1070年にはアナポリス交響楽団の音楽監督に就任して指揮者としての評価を獲得した。1992年から1998年まで新日本フィルハーモニー交響楽団の指揮者も務めた。

その後、1990年代後半になって、手術とボトックス療法、根気強く続けたリハビリによって、右手の演奏能力が復活。2004年には40年ぶりに録音を行い、リリースされたソロ・アルバム「TWO HANDS」は話題を集めた。

シュナーベルに師事したことから、フライシャー自身もベートーヴェンやブラームスを得意としたが、中でも、ジョージ・セル指揮のクリーヴランド管弦楽団と1959年から録音したベートーヴェンのピアノ協奏曲全集は名盤の誉れ高い。

写真:Joanne Savio


関連記事

  1. ミュンヘン発 〓 世界最大のビールの祭典「オクトーバーフェスト」も中止

  2. パリ発 〓 パリ国立オペラが2021/2022シーズンの公演ラインナップを発表

  3. 訃報 〓 ハンス・シュタットルマイア(89)オーストリアの指揮者

  4. ニューヨーク発 〓 カーネギー・ホールが来年年4月までの公演のキャンセルを発表

  5. パリ発 〓 パリ国立オペラが総監督のニーフとの契約を更改、2031/2032シーズン終了まで任期延長

  6. ベルリン発 〓 レコード賞「オーパス・クラシック」授賞式がコンツェルトハウスで

  7. ペーザロ発 〓 ロッシーニ・オペラ・フェスティバルは開催

  8. ウィーン発 〓 国立歌劇場が5月のストリーミング配信ラインナップを発表

  9. プラハ発 〓 セミヨン・ビシュコフが背中の手術のため、1ヶ月あまり指揮活動を休止

  10. ミュンヘン発 〓 ワーグナーの曽孫エヴァ・ワーグナー=パスキエ、イザール川で仮死状況で発見されるも昏睡状態

  11. ハイファ発 〓 ハイファ交響楽団の次期音楽監督にヨエル・レヴィ

  12. 訃報 〓 アントン・コッポラ(102)米国の指揮者、作曲家

  13. ポズナン発 〓 スタニスワフ・モニューシュコ大劇場が新制作の《幽霊屋敷》の初日9日の公演をライブ・ストリーミング

  14. ハンブルク発 〓 「ドイツ・グラモフォン」がブルース・リューと独占録音契約

  15. ロサンゼルス発 〓 ドゥダメルがロサンゼルス・フィルとの契約を延長

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。