訃報 〓 ミレッラ・フレーニ(84)イタリアのソプラノ歌手

2020/02/10
【最終更新日】2023/02/16

イタリアのソプラノ歌手ミレッラ・フレーニ(Mirella Freni)が9日、モデナの自宅で亡くなった。84歳だった。戦後最も活躍したオペラ歌手の一人で、若々しい声質と優れた演技力で世界各地の歌劇場で活躍。ヴェルディとプッチーニを中心に40を超える役柄を演じている。指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤンに重用されて数多くの録音を残している他、幼なじみのルチアーノ・パヴァロッティとも共演が多い。

フレーニはモデナ生まれ。母親がパヴァロッティの母親と同じタバコ工場で働いていたことから、同じ乳母の乳で育ったという。19歳だった1955年、この時はモデナの劇場で《カルメン》のミカエラ役を歌って初舞台を踏んだ。それをきっかけに出演依頼が舞い込んだが、声楽教師だった最初の夫レオーネ・マジエラと結婚して子育ての道を選んだという。1959年にネーデルランド国立オペラに所属して演奏活動に復帰した。

最初のブレイクは1960年のグラインドボーン音楽祭。フランコ・ゼフィレッリの演出による《愛の妙薬》のアディーナ役で大成功を収め、1961年には《ファルスタッフ》のナンネッタ役でロイヤル・オペラ・ハウスにもデビュー。1962年に同じ役でミラノ・スカラ座にもデビューした。スカラ座では翌1963年にゼフィレッリ演出、カラヤン指揮の《ラ・ボエーム》のミミを歌って大成功を収めた。

この公演を機にカラヤンとの共演が始まり、1964年には巨匠が指揮するゼフィレッリ演出の《椿姫》に抜擢されたが、1955年のマリア・カラスの公演を懐かしむ聴衆から大ブーイングを浴びて公演が大失敗に終わる事態に。この“事件”で、スカラ座では39年間、1994年にリッカルド・ムーティが周囲の反対を押し切って上演に挑戦するまで《椿姫》が上演されなかった。

1965年にはニューヨークのメトロポリタン歌劇場にもデビュー。1970年代に入ってからより重い声が求められる役柄にもレパートリーを広げたが、2005年に引退するまで、1990年代に入ってからも新しい役への挑戦を続けていた。初来日は1979年。1990年にイタリア共和国大十字騎士賞、1993年に仏政府からレジオン・ドヌール勲章を受章。2004年には、二度目の夫で往年の名バス歌手として活躍したニコライ・ギャウロフを亡くしている。

写真:Graham “gramilano” Spicer / Teatro alla Scala








関連記事

  1. ウィーン発 〓 国立歌劇場がストリーミング第2週のラインナップを発表、新制作の《ドン・ジョヴァンニ》もライブ配信

  2. 大阪発 〓 藤岡幸夫&関西フィル、ライブ録音によるシベリウスの交響曲全集をリリース

  3. ソウル発 〓 ソウル・ポップス・オーケストラのウクライナ人3人がロシアの侵略から祖国を守るため帰国、従軍

  4. ミラノ発 〓 スカラ座が2024/2025シーズンの公演ラインナップを発表

  5. チューリッヒ発 〓 チューリッヒはワクチン証明か、その場での検査陰性で入場可

  6. シュトゥットガルト発 〓 ダン・エッティンガーがシュトゥットガルト・フィルの首席指揮者兼音楽総監督を退任

  7. ウィーン発 〓 国立歌劇場の「オーパンバル」は2022年も中止決まる、新型コロナの収束見通せず

  8. ヴェッセルビューレン発 〓 五嶋みどりに「ブラームス賞」

  9. リヨン発 〓 リヨン国立オペラが2020/2021シーズンの公演ラインナップを発表

  10. 訃報 〓 ハンス・シュタットルマイア(89)オーストリアの指揮者

  11. ナポリ発 〓 サン・カルロ劇場に新総裁、ムーティ招聘への布石?

  12. マチェラータ発 〓 マチェラータ・オペラ・フェスティバルが2023年の公演ラインナップを発表

  13. ニューヨーク発 〓 ウクライナ人演奏家集めた「フリーダム・オーケストラ」が欧米をツアー

  14. シカゴ発 〓 シカゴ響がコンサートを中止、ムーティに陽性反応

  15. モスクワ発 〓 ボリショイ劇場が過去の公演をYouTubeで配信

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。