訃報 〓 ハリー・クプファー(84)ドイツの演出家

2020/01/01
【最終更新日】2023/02/16

世界的な演出家ハリー・クプファー(Harry Kupfer)が昨年12月30日、ドイツ・ベルリンの自宅で亡くなった。84歳だった。旧東ドイツを拠点にヨーロッパで最も前衛的な演出家の一人として注目を集め、1981年には東ベルリンのコーミッシェ・オーパー(Komische Oper Berlin)の首席演出家に就任、そこを拠点に数多くの名舞台を手掛けたことで知られる。

1935年、ベルリンの生まれ。音楽と劇の一体化をめざす「ムジークテアター」を実践した戦前の巨匠ヴァルター・フェルゼンシュタイン(Walter Felsenstein)の薫陶を受けた一人。フェルゼンシュタインが創設したコーミッシェ・オーパーでは2002年に離任するまで東西ドイツ統一後もその任にあった。

演出家デビューは1958年、ハレ歌劇場の《ルサルカ》。その後、カール・マルクス=シュタット、ワイマール、ドレスデンと、東ドイツの劇場でオペラの演出家として活動した。

これまでに200近い作品を演出。世界各地の歌劇場、音楽祭への客演も多く、中でもバイロイト音楽祭では、1988年から1992年にかけてダニエル・バレンボイム指揮の《ニーベルングの指環》を演出を手掛けて上演史に金字塔を打ち立てた。

また、ザルツブルク音楽祭にも、1986年にペンデレツキのオペラ《黒い仮面》の世界初演を手掛けてデビュー。2014年にはリヒャルト・シュトラウスの《薔薇の騎士》も演出した。

最近まで精力的に活動しており、2019年は古巣のコーミッシェ・オーパーでヘンデルのオペラ《インド王ポーロ》、チューリヒ歌劇場で《タンホイザー》の演出を手掛けた。日本でも、クプファーが新演出を手掛けた《パルジファル》が2014/2015シーズンに新国立劇場で上演されている。

写真:Komische Oper Berlin

関連記事

  1. シカゴ発 〓 シカゴ響が2022年1月の台湾、中国、日本ツアーの中止を発表

  2. ドレスデン発 〓 ドレスデン・シュターツカペレが次期首席指揮者にダニエレ・ガッティを選択

  3. ザルツブルク発 〓 ティーレマンがバッハラーに“宣戦布告”

  4. ジュネーブ発 〓 ジュネーブ大劇場がモーツァルト《皇帝ティートの慈悲》の新作をライブ・ストリーミング

  5. ミラノ発 〓 スカラ座のコンサート、ハーディングの代役になんと、バレンボイム

  6. ソウル発 〓 ソウル・ポップス・オーケストラのウクライナ人3人がロシアの侵略から祖国を守るため帰国、従軍

  7. 訃報 〓 ハンス・ドレヴァンツ(91)ドイツの指揮者

  8. トロント発 〓 カナディアン・オペラ・カンパニーの総監督にペリン・リーチ

  9. バイロイト音楽祭 〓 夏の音楽祭のチケットのネット販売を停止

  10. ボーンマス発 〓 ボーンマス響の次期首席指揮者にマーク・ウィッグルスワース

  11. 東京発 〓 東フィルが2024シーズンのラインナップを発表

  12. ミラノ発 〓 クリスティアン・ティーレマンが代役で久々にスカラ・フィルの指揮台に

  13. ウィーン発 〓 ウィーン国立歌劇場管のコンサートマスターにフョードル・ルディン

  14. ウィーン発 〓 フォルクスオーパーが2022/2023シーズンの公演ラインナップを発表

  15. バイロイト発 〓 メゾ・ソプラノのエリーナ・ガランチャがバイロイト音楽祭デビュー、新制作の《パルジファル》のクンドリー役で

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。