訃報 〓 ネルソン・フレイレ(77)ブラジルのピアニスト

2021/11/01
【最終更新日】2023/02/06

ブラジルのピアニスト、ネルソン・フレイレ(Nelson Freire)が10月31日、リオ・デ・ジャネイロで亡くなった。77歳だった。戦後を代表するピアニストの一人。2年前に散歩中に石に躓いて転倒、肩と肘を繋ぐ上腕骨を骨折した後、演奏活動から遠ざかっていた。

1944年、ブラジルの小都市ボア・エスペランサ生まれ。5人兄弟の末っ子で、3歳から姉の演奏を真似てピアノを弾きこなしていることに気付いた両親が音楽教育を受けさせるため、一家は彼が5歳の時にリオ・デ・ジャネイロに移住した。

12歳だった1957年、ギオマール・ノヴァエスやマルグリット・ロン、リリー・クラウスが審査員を務めた第1回「リオ・デ・ジャネイロ国際ピアノ・コンクール」で入賞。翌1958年にはブラジル大統領からの奨学金を受け、ウィーン音楽院(現在のウィーン国立音楽演劇大学)に進み、フリードリヒ・グルダの師ブルーノ・ザイドルホーファーに師事した。

1959年からソロ活動をスタートさせ、1964年にはリスボンで行われた第2回「ヴィアナ・ダ・モッタ国際音楽コンクール」で優勝。22歳だった1966年にはロンドン・デビューを果たして、センセーショナルな成功を収め、タイムズ誌から「若き鍵盤の獅子」と形容された。

以来、国際的な活動を展開。磨き上げられた奥深い響き、繊細でどこまでも詩的で人に暖かい音楽を紡いで多くの音楽ファンを魅了してきた。10代からの知り合いであるマルタ・アルゲリッチとの友情でも知られ、二人でたびたび共演を重ねた。

演奏活動のかたわら、世界的なコンクールの審査員を歴任。2001年にはパリで行われている「ロン=ティボー国際コンクール」の審査員長も務めた。2021年には第18回「ショパン国際ピアノ・コンクール」の審査員となるも体調不良でキャンセルしており、アルゲリッチも一緒に審査員を降りている。

2003年にはジョアン・モレイラ・サレス監督によるドキュメンタリー映画『A man and his music=邦題:ネルソン・フレイレ』が制作された。録音は少なかったが、2001年に「デッカ」レーベルと専属契約を結び、2007年にはブラームスのピアノ協奏曲全集を発表、英国の「グラモフォン賞」の協奏曲部門を受賞している。

写真:Universal Music / Mat Hennek





関連記事

  1. ウィーン発 〓 国立歌劇場が《トリスタンとイゾルデ》の27日の公演をライブ・ストリーミング

  2. パリ発 〓 パリ国立オペラが総監督のニーフとの契約を更改、2031/2032シーズン終了まで任期延長

  3. ウィーン発 〓 国立歌劇場が新シーズン、2022/2023シーズンの公演ラインナップを発表

  4. ミュンヘン発 〓 テノール歌手のダニエル・プロハスカにバイエルン州から「宮廷歌手」の称号

  5. ウィーン発 〓 国立歌劇場のボグダン・ロシュチッチ総監督が契約を延長

  6. ロンドン発 〓 ロイヤル・オペラが5月17日に《皇帝ティートの慈悲》の公演で再開場、公演のストリーミング配信も

  7. 東京発 〓 東京都交響楽団が歴代指揮者との名演奏をYouTubeで配信

  8. シュトゥットガルト発 〓 コルネリウス・マイスターが州立劇場の音楽総監督退任へ

  9. ウィーン発 〓 国立歌劇場が新シーズンの開幕を飾る新制作の《ドン・カルロ》をストリーミング配信

  10. 訃報 〓 ユーリ・アルペルテン(63)エストニアの指揮者

  11. トロント発 〓 トロント交響楽団の音楽監督にグスターボ・ヒメノ

  12. トリノ発 〓 テアトロ・レッジョの大規模改修工事スタート、2022年9月まで閉館

  13. 訃報 〓 アレクサンドル・ヴェデルニコフ(56)ロシアの指揮者

  14. ライプツィヒ発 〓 18代目の「トーマスカントル」にアンドレアス・ライズが就任

  15. ルツェルン発 〓 ルツェルン響の次期首席指揮者にミヒャエル・ザンデルリング

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。