訃報 〓 マリス・ヤンソンス(76)ラトビアの指揮者

2019/12/01
【最終更新日】2023/02/16

ラトビアの巨匠指揮者マリス・ヤンソンス(Mariss Jansons)が11月30日、サンクト・ペテルブルクの自宅で76歳で亡くなった。心臓に持病を抱え、1996年にオスロのノルウェー国立歌劇場でオペラ“ボエーム”を指揮していて心臓発作で倒れている。今年は夏の活動をすべて停止。9月にシーズンが幕を開けた後も、2003年から首席指揮者を務めるバイエルン放送交響楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートの指揮を相次いで降板していた。

1943年、ナチス・ドイツ占領後のラトビアの首都リガの生まれ。父親は後にエフゲニー・ムラヴィンスキーと共にレニングラード・フィルハーモニー交響楽団の指揮者を務めたアルヴィド・ヤンソンス。母親のイライダ・ヤンソンスはユダヤ系の歌手で、父親と兄弟をリガのゲットーで殺害された後、リガで潜伏生活を送っていたという。

レニングラード音楽院でピアノ・ヴァイオリン・指揮を学んだ後、ウィーン国立音楽アカデミーに留学、ハンス・スワロフスキーに師事した。1971年、カラヤン国際指揮者コンクールで2位を獲得し、レニングラード・フィルを指揮してデビューした。1973年からムラヴィンスキーの助手として副指揮者を務め、彼に率いられた1977年の日本公演で初来日。1986年、1989年、1992年、1994年にも来日ツアーで指揮台に立っている。

最初の大きなポストはオスロ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者で、1979年から2000年まで務めた。1997年から2004年までピッツバーグ交響楽団の首席指揮者も兼任。その後、活動の場は大きく広がり、2003年からバイエルン放送交響楽団、2004年からロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(-2015)という、ヨーロッパの名門オーケストラの首席指揮者を兼任した。

オペラからオーケストラまでレパートリーは広く、得意としたのは、ベートーヴェンやリヒャルト・シュトラウス、ドボルザーク、マーラー、ショスタコーヴィチなどのドイツ・オーストリア系の音楽、ロシア物で、中でも、ショスタコーヴィチは8つのオーケストラによる交響曲全集を完成させている。2006年、2012年、2016年のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサートの指揮者を務めている。

写真:Bavarian Radio Symphony Orchestra / Peter Meisei

関連記事

  1. リガ発 〓 指揮者のカレル・マーク・チチョンがラトビア国籍を取得

  2. ウィーン発 〓 作曲家のオルガ・ノイヴィルトにオーストリア政府が科学・芸術名誉十字章

  3. リガ発 〓 リガ・ユールマラ音楽祭が2022年夏の公演ラインナップを発表、マリス・ヤンソンス音楽祭管弦楽団はクラウス・マケラが指揮

  4. リガ発 〓 ラトビア国立響の次期音楽監督兼芸術監督にフィンランドの若手タルモ・ペルトコスキ

  5. ヴェッセルビューレン発 〓 五嶋みどりに「ブラームス賞」

  6. ウィーン発 〓 ニューイヤー・コンサートの「ラデツキー行進曲」のアレンジを一新

  7. サンフランシスコ発 〓 サンフランシスコ・オペラの次期音楽監督にキム・ウンソン

  8. ミュンヘン発 〓 ヤンソンス追悼演奏会はメータが指揮

  9. フランクフルト発 〓 hr響の次期首席指揮者にアラン・アルティノグリュ

  10. リガ発 〓 2022年の「オペラリア」はラトビア国立歌劇場で

  11. リガ・ユールマラ音楽祭 〓 ネルソンズがバイロイト祝祭管弦楽団を率いて登場、シカゴ交響楽団の代役で

  12. ニューヨーク発 〓 映画『The Song of Names』、北米での公開始まる

  13. モンテカルロ発 〓 チェチーリア・バルトリがモンテカルロ歌劇場の監督に

  14. ロンドン発 〓 ランキング2018、オペラの一番人気は《椿姫》

  15. ワシントン発 〓 ナショナル響がロンドン響のレーベル「LSO Live」からアルバムをリリース

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。