訃報 〓 ナイジェル・ロジャース(86)英国のテノール歌手

2022/01/25
【最終更新日】2023/02/06

英国のテノール歌手ナイジェル・ロジャース(Nigel Rogers)が1月19日に亡くなった。86歳だった。声楽における古楽演奏の先駆者の一人で、中世からバロックまでの作品の歌唱法と自然な発声法によって、音楽の解釈を変えたとされる。

1935年、英国シュロップシャー州ウェリントンの生まれ。ケンブリッジ大学のキングス・カレッジで学んだ後、ローマ、ミラノで学び、その後、ミュンヘン音楽大学で著名なバリトン歌手ゲルハルト・ヒュッシュに師事した。

ミュンヘン時代の1960年、トーマス・ビンクリー、スターリング・ジョーンズ、アンドレア・フォン・ラムと中世音楽を活動の中心に据えた「ミュンヘン古楽スタジオ」の起ち上げに加わった。ロジャースが加わった11タイトルの録音の中でも、1966年にリリースされたダウランドのアルバムは高い評価を受けた。

その後、古楽演奏のパイオニアの一人として、グスタフ・レオンハルト、ニコラウス・アーノンクール、ユルゲン・ユルゲンス、デイヴィッド・マンロウ、クリストファー・ホグウッドらとの共演や録音を重ねた。ユルゲンス指揮のモンテヴェルディのオペラ《オルフェオ》、アーノンクール指揮のマタイ受難曲の録音でもテノールを担当している。

また、1978年からロンドンの王立音楽大学の古楽歌唱の教授に就任。1979年にはイタリアのバロック音楽演奏のための声楽アンサンブル「キアロスクーロ」を設立している。1993年に教授を退任した後も、数多くの歌唱マスタークラスやワークショップを開催して数多くの後進を育てた。

写真:BBC


関連記事

  1. ロッテルダム発 〓 音楽メッセ「クラシカル・ネクスト」が中止を発表

  2. ベルリン発 〓 ベルリン州立オペラが新制作の《フィガロの結婚》をライブ・ストリーミング

  3. 東京発 〓 第31回「高松宮殿下記念世界文化賞」音楽部門はアンネ=ゾフィー・ムター

  4. サンフランシスコ発 〓 サンフランシスコ・オペラが昨年の《ローエングリン》公演の舞台裏を描いたドキュメンタリー映像を配信

  5. ベルゲン発 〓 エドワード・ガードナーがベルゲン・フィルの首席指揮者を退任して名誉指揮者に

  6. バルセロナ発 〓 ルドヴィク・モルローがバルセロナ響との契約を延長

  7. ブダペスト発 〓 ハンガリー放送響の次期首席指揮者にリッカルド・フリッツァ

  8. ベルリン発 〓 第2ヴァイオリンの首席にマレーネ・イトウ、ベルリン・フィル

  9. ロングボロー発 〓 ロングボロー・フェスティバル・オペラが2022年の公演ラインアップを発表

  10. ブッパータール発 〓 オーストリアの若手指揮者パトリック・ハーンがブッパータール市との契約を延長

  11. 訃報 〓 ジュゼッペ・ジャコミーニ(80)イタリアのテノール歌手

  12. ビルバオ発 〓 ビルバオ・オペラが2024/2025シーズンの公演ラインナップを発表

  13. 訃報 〓 リボール・ペシェク(89)チェコの指揮者

  14. トリノ発 〓 リッカルド・ムーティがストリーミングのための《コジ・ファン・トゥッテ》を指揮してトリノ歌劇場にデビュー

  15. ロンドン発 〓 オペラ・フェスティバル「ガーシントン・オペラ」が2021年上演の《薔薇の騎士》をストリーミング配信

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。