訃報 〓 アンドレ・プレヴィン(89)米国の指揮者・作曲家・ピアニスト

2019/03/01
【最終更新日】2023/02/16

指揮者、作曲家、ピアニストとして幅広い活動を続けた米国の音楽家アンドレ・プレヴィン(André Previn)が2月28日、ニューヨーク・マンハッタンの自宅で亡くなった。89歳だった。若くしてジャズ・ピアニストとして注目を集めた後、ハリウッドの映画音楽の作曲を手がけ、オードリー・ヘップバーンが主演した1964年の「マイ・フェア・レディ=My Fair Lady」などでアカデミー賞を4度受賞。その後、指揮者として活躍。ロンドン交響楽団やロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団などの首席指揮者を歴任。その後も、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団をはじめとする、世界の著名オーケストラに数多く客演してきた。日本でも2009年から3年間、NHK交響楽団の首席客演指揮者を務めた。

プレヴィンは1929年、ベルリン生まれ。ユダヤ系ドイツ人の家庭に生まれ、6歳で音楽学校に入学してピアノを学んだが、ナチス・ドイツ政権の迫害を逃れて1939年に米国に移住。1943年には米国の市民権を取得し、1950年に招集されて陸軍軍楽隊に所属した。戦後はMGM映画の音楽監督に。アカデミー賞のノミネートは13回。「マイ・フェア・レディ」で編曲賞、1958年の「恋の手ほどき=Gigi」でミュージカル映画音楽賞、1959年の「ポーギーとベス=Porgy and Bess」で作曲賞、1963年の「あなただけ今晩は=Irma La Douce」で音楽賞を受賞している。グラミー賞はノミネート44回で受賞10回。「恋の手ほどき」のアルバムで初受賞し、2010年には特別功労賞を受賞している。

その一方、フランス人指揮者のピエール・モントゥーに師事。指揮者として活動の場を広げ、ヒューストン交響楽団の音楽監督を皮切りにさまざまなオーケストラを指揮。ロンドン交響楽団(1968-1979)、ピッツバーグ交響楽団(1976-1984)、ロサンジェルス・フィルハーモニック(1985- 1989)、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(1985-1992)、オスロ・フィルハーモニー管弦楽団(2002-2006年)などで音楽監督、首席指揮者などを歴任した。ロンドン交響楽団との縁はその後も続き、1992年に桂冠指揮者、2016に名誉指揮者の称号を贈られている。最後に指揮したのは2015年で、2016年に予定されたコンサートは体調を崩してキャンセルしている。

英国ではナイト(KBE)に叙せられている他、1998年にはケネディ・センター賞(Kennedy Center Honors)を授与された。作曲活動は長く続けており、2014年にはヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲がシンシナティで世界初演された。また、4月に90歳を迎えることから、夏のタングルウッド音楽祭では、ソプラノのルネ・フレミングとエマーソン弦楽四重奏団が共演して《ペネロペ》の世界初演が行われる予定だった。私生活では5度結婚。1952年にジャズ・シンガーのベティ・ベネットと初めて結婚した後、女優のミア・ファロー、ヴァイオリニストのアンネ=ゾフィー・ムターらと結婚しており、2002年に再婚したムターとは仕事で忙しくて会えないとの理由で2006年に離婚している。

写真:Oslo Philharmonic Orchestra





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