西村朗(69)日本の作曲家

2023/09/12

作曲家の西村朗(Akira Nishimura)が7日、右上顎(じょうがく)がんで亡くなった。69歳だった。西洋の現代作曲技法を使いながらも、音高やリズムのずれによって多層的な響きを生み出し、アジアの伝統音楽、宗教、美学、宇宙観などを表現した「ヘテロフォニー」の手法を確立した。

大阪市生まれで、東京藝術大学、大学院で矢代秋雄、野田暉行に師事。1974年の「日本音楽コンクール」作曲部門で1位となって注目を集め、1977年にはベルギーのエリザベート国際音楽コンクールの作曲部門で大賞を受賞した。

旺盛な作曲活動で知られ、代表作に《幻影とマントラ》、アジア各国の民族の感性を縦横に採り入れた《2台のピアノと管弦楽のヘテロフォニー》、石川淳の短編を原作にしたオペラ《紫苑(しおん)物語》など。この7月にも三重協奏曲《胡蝶夢》が初演されている。

作曲活動のかたわら、武満徹作曲賞など数多くの審査員、いずみシンフォニエッタ大阪、10年から草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルの音楽監督を歴任。NHK教育「N響アワー」などの音楽番組の司会を務め、軽妙な語り口で人気を博した。

また、東京音楽大学で後進の指導にも当たり、日本の作曲家の優れた管弦楽作品に贈られる尾高賞を1988年、1992年、1993年、2008年、2011年に受賞。サントリー音楽賞など受賞多数。2013年に紫綬褒章。

写真:Kusatsu International Summer Music Academy & Festival


関連記事

  1. モスクワ発 〓 ミハイル・プレトニョフの後任にアレクサンドル・ルディン、ロシア・ナショナル管の音楽監督

  2. ロンドン発 〓 ロイヤル・オペラの首席客演指揮者にスペランツァ・スカップッチ

  3. ロンドン発 〓 置き忘れたヴァイオリン、スティーブン・モリスに戻る

  4. 東京発 〓 東京二期会が2024/2025シーズンの公演ラインナップを発表

  5. テルアビブ発 〓 トーマス・ハンプソンもイスラエルに入国できず、そのまま帰国

  6. グラスゴー発 〓 トマス・ダウスゴーまた離任、BBCスコティッシュ交響楽団が後任にライアン・ウィグルスワース

  7. ウィーン発 〓 2023年の「ニューイヤー・コンサート」の指揮者はフランツ・ウェルザー=メスト

  8. ベルリン発 〓 バレンボイムが「健康上の理由」で、州立オペラの定期演奏会の指揮をキャンセル

  9. 訃報 〓 フー・ツォン(86)中国生まれの英国のピアニスト

  10. ザルツブルク発 〓 ハイティンクがウィーン・フィルの名誉会員に

  11. シュトゥットガルト発 〓 州立劇場の音楽総監督にオーストラリアの指揮者ニコラス・カーター、コルネリウス・マイスターの後任

  12. ミュンヘン発 〓 8月末からのミュンヘン国際音楽コンクールも中止

  13. 東京発 〓 新国立劇場が4月10日からストリーミング配信を開始

  14. パリ発 〓 「France Musique」が年末年始、パリ国立オペラによるワーグナー《ニーベルングの指環》4部作をストリーミング配信

  15. モスクワ発 〓 ヴァシリー・ペトレンコがスヴェトラーノフ記念ロシア国立響の芸術監督に

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。