訃報 〓 エル・システマの創設者、ホセ・アントニオ・アブレウが死去

2018/03/25
【最終更新日】2018/04/02

エル・システマ(El Sistema)の創設者として知られるホセ・アントニオ・アブレウが24日、79歳で亡くなった。アブレウは1939年、ベネズエラ北西部の州トルヒーリョ州のバレラ生まれ。バルキシメート、首都カラカスで音楽、経済を学び、指揮者として活動。その後、音楽教育を通した貧困層の解消に着目、「芸術文化が裕福な一部の人間だけに享受されてはならない」という信念に基づき、1975年にベネズエラ国立青少年オーケストラネットワーク「エル・システマ=National Network of Youth and Children Orchestras of Venezuela」を起ち上げた。そこからグスターボ・ドゥダメル、ディエゴ・マテウス、クリスチャン・バスケスといった指揮者をはじめ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席コントラバス奏者エディクソン・ルイスら数多くの音楽家が巣立っている。

「エル・システマ」は、家庭の経済状況にもかかわらず、すべての子が無償で集団での音楽教育が受けられる仕組み。そこでの活動を通じて、子どもたちが自ら協調性や規律を学び、目標に積極的に取り組んでいく姿勢を育み、希望や誇りを持てるようにする、といった社会改革システムでもある。ベネズエラでは現在、125のユース・オーケストラが設立され、30万人を超える子どもたちが音楽学校に通っており、子どもたちを犯罪や暴力から守り、学業面も含めてポジティブな影響を与えるなど大きな効果を生み出した。

その成功は児童保護活動やコミュニティー開発運動となって世界に広がり、60以上の国・地域で同様の取り組みが展開されて大きな効果を上げている。1983年にはベネズエラの文化大臣に就任、2009年にはユネスコのアンバサダーを務めている。ユネスコ国際音楽賞、アストゥリアス賞、ポーラー音楽賞、エラスムス賞、高松宮記念世界文化賞、ドイツ文化勲章など受賞多数。「音楽は不幸を希望に変える」として音楽の可能性を追求した生涯だった。

奇しくも彼が亡くなったこの日、愛弟子のドゥダメルがスペイン国籍を取得した。スペインの女優マリア・バルベルデと結婚したのが直接的なきっかけ。原油収入の落ち込みで政治的、経済的な危機が続く中、ドゥダメルはベネズエラ政府批判を重ねており、 ニコラス・マドゥロ大統領との対立が深まっていた。

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