訃報 〓 ホセ・アントニオ・アブレウ(79)エル・システマの創設者

2018/03/25
【最終更新日】2023/02/06

音楽教育とコミュニティー開発を兼ねた社会システム「エル・システマ=El Sistema」の創設者として知られるベネズエラの社会活動家ホセ・アントニオ・アブレウ(José Antonio Abreu)が24日、79歳で亡くなった。ベネズエラの文化大臣なども歴任、「音楽は不幸を希望に変える」として音楽の可能性を追求した生涯だった。

アブレウは1939年、ベネズエラ北西部の州トルヒーリョ州のバレラ生まれ。バルキシメート、首都カラカスで音楽、経済を学び、指揮者として活動。その後、音楽教育を通した貧困層の解消に着目、「芸術文化が裕福な一部の人間だけに享受されてはならない」という信念に基づき、1975年にベネズエラ国立青少年オーケストラネットワーク「エル・システマ=National Network of Youth and Children Orchestras of Venezuela」を起ち上げた。

「エル・システマ」は、家庭の経済状況にもかかわらず、すべての子が無償で集団での音楽教育が受けられる仕組み。そこでの活動を通じて、子どもたちが自ら協調性や規律を学び、目標に積極的に取り組んでいく姿勢を育み、希望や誇りを持てるようにする、といった社会改革システムでもある。

ベネズエラでは現在、125のユース・オーケストラが設立され、30万人を超える子どもたちが音楽学校に通っており、そこからグスターボ・ドゥダメル、ディエゴ・マテウス、クリスチャン・バスケスといった指揮者をはじめ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席コントラバス奏者エディクソン・ルイスら数多くの音楽家が巣立っている。

また、システムは60以上の国・地域で同様の取り組みが展開されて大きな効果を上げ、1983年にはベネズエラの文化大臣に就任、2009年にはユネスコのアンバサダーを務めている。ユネスコ国際音楽賞、アストゥリアス賞、ポーラー音楽賞、エラスムス賞、高松宮記念世界文化賞、ドイツ文化勲章など受賞多数。

奇しくも彼が亡くなったこの日、愛弟子のドゥダメルがスペイン国籍を取得した。スペインの女優マリア・バルベルデと結婚したのが直接的なきっかけ。原油収入の落ち込みで政治的、経済的な危機が続く中、ドゥダメルはベネズエラ政府批判を重ねており、 ニコラス・マドゥロ大統領との対立が深まっていた。

写真:El Sistema


関連記事

  1. オスロ発 〓 ノルウェー国立オペラが2018/2019シーズンのラインナップを発表

  2. ミュンヘン発 〓 バイエルン州立オペラが2026/2027シーズンの公演ラインナップを発表

  3. クリーブランド発 〓 米国のクリーブランド管が音楽監督のフランツ・ウェルザー=メストに率いられて8月末から9月上旬にかけてヨーロッパ・ツアー

  4. 訃報 〓 ガリーナ・ピサレンコ(88)ロシアのソプラノ歌手

  5. トリノ発 〓 RAI国立交響楽団の首席指揮者にミケーレ・マリオッティ

  6. トビリシ発 〓 ヴァイオリンのバティアシュヴィリが母国ジョージアに若い音楽家を支援するための財団を設立

  7. ロンドン発 〓 「BBCミュージック・マガジン」年次賞のノミネート・アルバム決まる

  8. ダルムシュタット発 〓 州立劇場が音楽総監督のダニエル・コーエンとの契約を延長

  9. ウィーン発 〓 コンツェルトハウスがクルレンツィス&ムジカエテルナのコンサートをキャンセル、ウクライナ大使の要請受け

  10. ボルドー発 〓 ミンコフスキがボルドー国立オペラとの契約を延長

  11. エディンバラ発 〓 エディンバラ国際フェスティバルも中止、8月開催で中止は初

  12. コペンハーゲン発 〓 クリストフ・ゲッショルトがコペンハーゲン・フィルの首席指揮者を突然辞任

  13. 訃報 〓 イヴォ・マレク(94)フランスの作曲家

  14. インスブルック発 〓 古楽音楽祭が新体制、音楽監督にオッタヴィオ・ダントーネ、アカデミア・ビザンチナがレジデンス・オーケストラに

  15. イスタンブール発 〓 パトリック・ハーンがトルコのボルサン・イスタンブール・フィルハーモニー管弦楽団の次期芸術顧問兼首席客演指揮者に

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。