キーウ発 〓 ウクライナの制裁リストにアンナ・ネトレプコ

2023/01/09

ウクライナの大統領府が7日、個人を対象とする制裁リストにロシアのアーティストやメディア関係者119人を新たに加えたと発表した。オペラ界ではソプラノ歌手のアンナ・ネトレプコ(Anna Netrebko)が加えられており、ウクライナへの入国禁止、ウクライナ内の資産凍結などの制裁が科される。

ウクライナは2月末のロシアによる武力侵略後、ロシアの政府高官や政治家、軍人、経済人に対する制裁を繰り返しており、既に数百人が制裁リスト入りしている。今回のリストは、アーティストやメディア関係者を中心としたもの。

リストにその名があるのは、ネトレプコの他、映画監督ニキータ・ミハルコフやコメディアンのエフゲニー・ペトロシアン、ポップス歌手のフィリップ・キルコロフやポリーナ・ガガーリアンら。また、メディア・グループの代表なども含まれている。

ネトレプコは侵略以降、ロシアのプーチン大統領に近いとみられたことから、ミュンヘンのバイエルン州立オペラやニューヨークのメトロポリタン歌劇場など欧米の歌劇場から出演をキャンセルされ、いまなお出演を求めない歌劇場も多い。そのため、本人はSNSなどを通じて3度にわたって戦争自体を非難する声明を出している。

昨年3月の最後の声明では、大統領との関係について「お会いしたのは、私の作品が表彰された時やオリンピックの開会式など、人生で数えるほどしかありません」と否定。「ウクライナに対する戦争を明確に非難し、私の思いはこの戦争の犠牲者とその家族とともにあります。私の立場は明確です」と強調している。

また、「私はいかなる政党のメンバーでもなく、いかなる指導者とも手を結んでいません。私の過去の行動や発言が誤解される可能性があったことは認め、反省している。私はロシア政府から金銭的な支援を受けたことはなく、オーストリアに居住し、納税者でもあります」と弁明している。

ところが、そうした発言が今度は逆にロシアで反発を受け、“裏切り者”扱いされ、予定されていたコンサートがすべてキャンセルされるという逆風にさらされた。そのため、ネトレプコは2月以降は一度もロシアに戻っていない。

写真:Arena di Verona


関連記事

  1. 東京発 〓 ウェルザー=メストの代役はソヒエフ、ウィーン・フィルの日本ツアー

  2. モスクワ発 〓 ヴァシリー・ペトレンコがスヴェトラーノフ記念ロシア国立響の芸術監督に

  3. ロンドン発 〓 メゾ・ソプラノのサラ・コノリーに国王音楽勲章

  4. フィラデルフィア発 〓 ピアニストのゲイリー・グラフマンがカーティス音楽院を退任

  5. ブダペスト発 〓 ブダペスト祝祭管弦楽団が新型コロナウイルスの犠牲者を追悼する演奏会でモーツァルトのレクイエム

  6. ダブリン発 〓 RTÉ国立交響楽団が首席指揮者にスペイン出身のハイメ・マルティーン

  7. バレンシア発 〓 ソフィア王妃芸術宮殿の次期音楽監督にジェームズ・ガフィガン

  8. ニューヨーク発 〓 ニューヨーク・フィルの活動再開は2021年1月

  9. ハンブルク発 〓 ハンブルク州立オペラが2022/2023シーズンの公演ラインナップを発表

  10. ライプツィヒ発 〓 ブロムシュテットがモーツァルトの新発見作品を早くも録音

  11. ベルリン発 〓 バレンボイムが健康上の理由から、5月1日のベルリン・フィル「ヨーロッパ・コンサート」の指揮から降板

  12. ライプツィヒ発 〓 市立歌劇場の次期音楽総監督にクロアチアのイヴァン・レプシッチ

  13. ライプツィヒ発 〓 チェロの鈴木秀美が「ヨハン・セバスティアン・バッハ国際コンクール」のチェロ/バロック・チェロ部門の審査委員長に

  14. ジュネーブ発 〓 第75回「ジュネーヴ国際コンクール」のチェロ部門で、ドイツ在住の上野通明が優勝

  15. ローマ発 〓 ローマ歌劇場が2021/2022シーズンの公演ラインナップを発表

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。