ウィーン発 〓 中止された公演の報酬めぐり、ザルツブルグ音楽祭に対して集団訴訟か。芸術監督の辞任も要求

2022/11/16
【最終更新日】2022/11/24

コロナ禍で多くの公演が中止された2020年のザルツブルク音楽祭をめぐり、未払いの報酬があるとして、67人のオペラ歌手、120人の合唱団員が集団訴訟を起こす準備をしていることが判った。代理人の弁護士が11日、ウィーン市内で記者会見して明らかにした。

発表によると、2020年の音楽祭ではコロナ禍でムソルグスキーのオペラ《ボリス・ゴドノフ》など多くの上演が中止されたが、既に始まっていたリハーサルに参加していたフリーランスのアーティスト、合唱団員らに対する報酬が十分に支払われていないとしている。公演中止などで影響を受けたアーティストは約120人に上り、未払い分の総額は推定で約1000万ユーロ(約14億4,000万円)になるという。

また、音楽祭が合唱団に対して値引きを求めたことについて、訴訟団に加わるテノール歌手のヴォルフガング・アプリンガー=シュペルハッケは「コンサート協会の正会員は追加会員の約2倍の金額を受け取っている、これは平等原則にあからさまに違反している」と、平等法に反すると主張している。

これに対して音楽祭は、2020年の音楽祭は、コロナ禍の最初の夏に開催された世界で最も大きな音楽イベントであり、何百人ものアーティストに雇用を提供したと指摘。「2020年に予定されていた作品はほぼすべて2021年と2022年にスライドさせることに成功」、それに当たり、アーティストの所属事務所、オーケストラ、合唱団との間で、今後キャンセルが発生した場合についてそれぞれの前払い金などを規定した独自のコロナ条項に合意しており、その際に精算済みとの考え。

訴訟団は当事者間で合意が得られない場合は、訴訟に踏み切るだけでなく、訴訟の中で音楽祭の芸術監督を務めるピアニストのマルクス・ヒンターハウザーの退任を求めることを明らかにした。ヒンターハウザーは2016年からその任にあり、2019年の契約更改で任期は2026年まで延長されている。

写真:Salzburger Festspiele


  音楽祭プロフィールはこちら ▷

  音楽祭から生まれた銘盤 ▷


関連記事

  1. ウィーン発 〓 ソニーが「ニューイヤー・コンサート」2020のネット配信を開始

  2. ウィーン発 〓 2025年元旦の「ニューイヤー・コンサート」の指揮者はリッカルド・ムーティ

  3. ウィーン発 〓 フィリップ・ジョルダン、国立歌劇場の音楽監督退任へ

  4. バーデン=バーデン発 〓 復活祭音楽祭、2025年のオペラは《蝶々夫人》

  5. ザルツブルク聖霊降臨祭音楽祭 〓 代役でネトレプコが《トスカ》に出演

  6. ウィーン発 〓 フォルクスオーパーが芸術監督のロッテ・デ・ベアとの契約を延長

  7. ルツェルン音楽祭 〓 リッカルド・シャイーが音楽祭管弦楽団との契約を延長

  8. ヴェローナ音楽祭 〓 来年2022年の公演ラインナップを発表、故ゼフィレッリの名舞台がずらり

  9. ロンドン発 〓 夏の音楽祭「BBCプロムス」が2022年の公演ラインナップを発表

  10. バイロイト発 〓 バイロイト音楽祭が2026年の構想を発表、コスト上昇で規模を大幅に縮小

  11. ウィーン発 〓 作曲家ジョン・ウィリアムズがついにウィーン・フィルを指揮

  12. エディンバラ発 〓 国際芸術祭がリネハン総監督との契約を2022年まで延長

  13. ウィーン発 〓 来シーズンのウィーン・フィルの定期演奏会にミルガ・グラジニーテ=ティーラ、女性指揮者の定期起用はオーケストラ初

  14. ウォームズリー発 〓 ガーシントン・オペラが2023年の公演ラインナップを発表

  15. 松本発 〓 「セイジ・オザワ松本フェスティバル」が2023年の概要を発表、なんとジョン・ウィリアムズが客演!

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。