サンクト・ペテルブルク発 〓 ゲルギエフが本拠地マリインスキー劇場に復帰、続いてモスクワで《ニーベルングの指環》

2022/03/12

ロシアのウクライナ侵略をめぐり、動向が注目されていたロシアの指揮者ワレリー・ゲルギエフ(Valery Gergiev)が8日、本拠地サンクト・ペテルブルクのマリインスキー劇場の指揮台に復帰した。2月24日に侵略戦争が始まって以来、指揮台に上がるのはこの日が初めて。

ロシアのプーチン大統領と緊密な関係にあるゲルギエフは、侵略戦争が始まった2月24日から、国外のオーケストラ、音楽祭などから、政権と距離を置くことを明確にするよう求められたが、それに応えず、ミュンヘン・フィルの首席指揮者から解任された他、解任、降板に追い込まれ、国外での活動の場をほぼ失った。

復帰第1弾のコンサートは、ソリストにピアノのデニス・マツーエフを迎えたコンサート。マツーエフも、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の米国ツアーのソリストに起用されながら、プーチン大統領に近いことからゲルギエフと一緒に降板を余儀なくされている。

また、9日には、コンサート形式によるポンキエッリのオペラ《ラ・ジョコンダ》を指揮。ウクライナ侵略については、なお沈黙を守っているが、その身の処し方に対して、ロシアのメディアからは「彼は祖国が危険にさらされている時に市民として当然のことを行った」と英雄視されている。

11日からはマリインスキー劇場のモスクワ公演で首都へ。ワーグナー《ニーベルングの指環》連作4部作を、ザリヤディエ・コンサートホールを使ってセミ・ステージ形式で上演する。11日の後、23日、24日、4月17日というスケジュールで、ステージ・デザインはロシア系アメリカ人のジョルジュ・ツィピンが手掛けている。

一連の公演には、エフゲニー・ニキティン(ヴォータン・グンター)、ユーリ・ヴォロビエフ(ヴォータン)、ロマン・ブルデンコ(アルベリヒ)、ミハイル・ヴェクア(ジークムント、ジークフリート、ローゲ)、エレナ・スティッキナ(ジークリンデ、ブリュンヒルデ)、タチアーナ・パヴロフスカヤ(ブリュンヒルデ)、ミハイル・ペトレンコ(ハーゲン、フンディング、ファフナー)といった歌手たちが出演する。

写真:Mariinsky Theater


関連記事

  1. アムステルダム発 〓 フランソワ=グザヴィエ・ロト、コンセルトヘボウのシェーンベルク生誕150年記念コンサートから外される

  2. ベルン発 〓 スイスは1,000人以上のイベントを禁止、新型コロナウイルスの感染拡大で

  3. フランクフルト発 〓 第9回「ショルティ国際指揮者コンクール」で、中国系ニュージーランド人の吕天贻が優勝

  4. モスクワ発 〓 ロシアは過去24時間の新規感染者、死者とも過去最多を記録、来月7日まで全土で劇場など閉鎖

  5. モスクワ発 〓 ユロフスキがスヴェトラーノフ記念ロシア国立響の芸術監督兼首席指揮者を退任、名誉指揮者に

  6. ミュンヘン発 〓 補償の必要ないとミュンヘン市政府の法律顧問、ゲルギエフ解任で

  7. バルセロナ発 〓 ロメア劇場が新しいロッシーニ・フェスティバル

  8. ケルン発 〓 ヨーロッパ10都市でのウクライナ国歌演奏を集め連帯をアピール、欧州コンサートホール機構

  9. コペンハーゲン発 〓 デンマーク王立オペラの首席指揮者にフランスの若手マリー・ジャコー

  10. ベルリン発 〓 ベルリン放送響の首席客演指揮者にカリーナ・カネラキス

  11. ローザンヌ発 〓 ローザンヌ歌劇場が2021/2022シーズンの公演ラインナップを発表

  12. パリ発 〓 パリ国立オペラが新制作の《アイーダ》をストリーミング配信

  13. パリ発 〓 医療従事者の写真をバスティーユ歌劇場の壁面に、パリ国立オペラ

  14. パリ発 〓 パリ国立オペラが総監督のニーフとの契約を更改、2031/2032シーズン終了まで任期延長

  15. ウィーン発 〓 国立歌劇場が8日に再開場

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。