ポーランド出身のソプラノ歌手テレサ・ツィリス=ガラ(Teresa Żylis-Gara)が8月28日に亡くなった。91歳だった。1970年代から80年代にかけてニューヨークのメトロポリタン歌劇場を中心に活躍、同時に著名な歌劇場に出演を重ね、優雅で洗練された歌い回し、美しいコロラトゥーラとピュアな声で多くのオペラ・ファンを魅了した。
旧ポーランド領ランドヴァロフ(現在はリトアニア領レントヴァリス)の生まれ。9歳よりウッチの音楽学校で学び、1954年にワルシャワで行われた声楽コンクールで優勝。 1956年にクラクフ歌劇場でランドヴァロフ生まれの作曲家でポーランドの“オペラの父”モニューシュコの《ハルカ》でオペラ・デビューを飾った。
1960年、ミュンヘン国際音楽コンクールで第三位に入賞。その後、ドルトムント、デュッセルドルフの市立オペラの歌手としてキャリアを重ねた。1968年にはザルツブルク音楽祭やロンドンのロイヤル・オペラにデビューしている。
音楽祭ではモーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》のドンナ・エルヴィーラ役を歌い、1970年にヘルベルト・フォン・カラヤンが指揮した公演、1977年のカール・ベームが指揮した公演の両方に出演しており、どちらの録音も名盤の誉れ高い。
また、1969年はドンナ・エルヴィーラ役を歌ってニューヨークのメトロポリタン歌劇場にもデビューし、1970年から専属歌手陣に加わった。1984年にプッチーニ《マノン・レスコー》のタイトル・ロールを歌って別れを告げるまでの14シーズン、233回の出演を重ね、歌劇場の中核を担った。
ヴェルディ《オテロ》のデズデモーナ役も当たり役で、ベームの指揮で1972年にメトロポリタン歌劇場で、1975年にはロリン・マゼールの指揮でフランスのオランジュ音楽祭で歌っている。
イタリアでは1967年にローマ歌劇場にデビューしてから出演の機会は少なかったが、1976年にはミラノ・スカラ座にもデビューした。その後も著名な歌劇場へ出演、著名な音楽家と数多く共演を重ねた。
1980年からはモナコに住みながら、母国ポーランドで後進の指導に当たり、2004年にヴロツワフ、2016年にウッチの音楽アカデミーから名誉博士号を授与されている。ポーランド・ラジェヨビツェには銅像があり、ポーランド復興勲章の他、国際的な授章多数。
写真:Czesław Czapliński
訃報 〓 テレサ・ツィリス=ガラ(91)ポーランド出身のソプラノ歌手
2021/09/01
【最終更新日】2023/02/06
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