訃報 〓 テレサ・ツィリス=ガラ(91)ポーランド出身のソプラノ歌手

2021/09/01
【最終更新日】2023/02/06

ポーランド出身のソプラノ歌手テレサ・ツィリス=ガラ(Teresa Żylis-Gara)が8月28日に亡くなった。91歳だった。1970年代から80年代にかけてニューヨークのメトロポリタン歌劇場を中心に活躍、同時に著名な歌劇場に出演を重ね、優雅で洗練された歌い回し、美しいコロラトゥーラとピュアな声で多くのオペラ・ファンを魅了した。

旧ポーランド領ランドヴァロフ(現在はリトアニア領レントヴァリス)の生まれ。9歳よりウッチの音楽学校で学び、1954年にワルシャワで行われた声楽コンクールで優勝。 1956年にクラクフ歌劇場でランドヴァロフ生まれの作曲家でポーランドの“オペラの父”モニューシュコの《ハルカ》でオペラ・デビューを飾った。

1960年、ミュンヘン国際音楽コンクールで第三位に入賞。その後、ドルトムント、デュッセルドルフの市立オペラの歌手としてキャリアを重ねた。1968年にはザルツブルク音楽祭やロンドンのロイヤル・オペラにデビューしている。

音楽祭ではモーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》のドンナ・エルヴィーラ役を歌い、1970年にヘルベルト・フォン・カラヤンが指揮した公演、1977年のカール・ベームが指揮した公演の両方に出演しており、どちらの録音も名盤の誉れ高い。

また、1969年はドンナ・エルヴィーラ役を歌ってニューヨークのメトロポリタン歌劇場にもデビューし、1970年から専属歌手陣に加わった。1984年にプッチーニ《マノン・レスコー》のタイトル・ロールを歌って別れを告げるまでの14シーズン、233回の出演を重ね、歌劇場の中核を担った。

ヴェルディ《オテロ》のデズデモーナ役も当たり役で、ベームの指揮で1972年にメトロポリタン歌劇場で、1975年にはロリン・マゼールの指揮でフランスのオランジュ音楽祭で歌っている。

イタリアでは1967年にローマ歌劇場にデビューしてから出演の機会は少なかったが、1976年にはミラノ・スカラ座にもデビューした。その後も著名な歌劇場へ出演、著名な音楽家と数多く共演を重ねた。

1980年からはモナコに住みながら、母国ポーランドで後進の指導に当たり、2004年にヴロツワフ、2016年にウッチの音楽アカデミーから名誉博士号を授与されている。ポーランド・ラジェヨビツェには銅像があり、ポーランド復興勲章の他、国際的な授章多数。

写真:Czesław Czapliński


関連記事

  1. パリ発 〓 パリ国立オペラが2020/2021シーズンの公演ラインナップを発表

  2. ロンドン発 〓 ロンドン・フィルの次期首席指揮者にエドワード・ガードナー

  3. ロイトリンゲン発 〓 ヴュルテンベルク・フィルが首席指揮者のアリアーヌ・マティアクとの契約を延長

  4. ニューヨーク発 〓 ジュリアード音楽院が作曲科の科長ロバート・ビーザーをセクハラ疑惑で休職に

  5. ケルン発 〓 WDR響が首席指揮者のクリスティアン・マチェラルとの契約を延長

  6. ボストン発 〓 ボストン響が給与カットと一時休職で合意、タングルウッド音楽祭に希望繋ぐ

  7. モスクワ発 〓 ユロフスキがスヴェトラーノフ記念ロシア国立交響楽団との契約を延長

  8. ハンブルク発 〓 ハンナ・チャンがハンブルク響の首席客演指揮者に

  9. ドレスデン発 〓 名指揮者ケンペの遺品が古巣のザクセン州立歌劇場へ

  10. ライプツィヒ発 〓 2025年の「バッハ・メダル」はオーボエ奏者のマルセル・ポンセールに

  11. ロンドン発 〓 イングリッシュ・ナショナル・オペラが2023/2024シーズンの公演ラインナップを発表、年次補助金の打ち切りで新制作なし

  12. ロサンゼルス発 〓 2021年の「ゴールデングローブ賞」のノミネート作出揃う

  13. フィレンツェ発 〓 フィレンツェ5月音楽祭の新しい音楽監督にダニエレ・ガッティ

  14. 訃報 〓 ビリー・ゴールデンバーグ(84)米国の作曲家

  15. 訃報 〓 レナーテ・ホルム(90)オーストリアのソプラノ歌手

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。