訃報 〓 アンソニー・ペイン(84)英国の作曲家

2021/05/16
【最終更新日】2023/02/06

英国の作曲家アンソニー・ペイン(Anthony Payne)が4月30日に亡くなった。84歳だった。妻で歌手だったジェーン・マニングを1ヵ月前に亡くしたばかり。ヴォーン・ウィリアムズ、ディーリアス、エルガーといった20世紀初頭の作曲家の流れを汲み、現代的な音楽との融合を模索。遺された草稿を元にエルガーの交響曲第3番を「ペイン推敲版」として完成させたことでも知られる。

ロンドン生まれ。幼い頃から作曲に関心を示し、ロンドン南東部のダリッジ大学、ダラム大学で学んだ。しかし、1961年に卒業した後、しばらく神経衰弱に苦しんで作曲を断念する。1965年から作曲に復帰、1966年にはソプラノ歌手のジェーン・マニングと結婚。1972年に完成させた《フェニックス・ミサ》で新進作曲家として注目を集めた。

その後、複数の有力な楽団から新作の委嘱を受けるようになり、多くの作品がロンドンの夏の音楽祭「プロムス」で初演されるようになる。1988年、マニングとアンサンブル「ジェーンズ・ミンストレルズ」を設立。以後、アンサンブルに対して《風と雨の交響曲》といった作品を提供している。

その頃から1934年に死去したエルガーが書き残したスケッチを元に第3交響曲の補筆作業をスタート。1993年からは遺族の承認も得て、1998年の初演にこぎ着けた。エルガーについてはその後も、未完に終わった行進曲《威風堂々》第6番も完成させ、2006年の「プロムス」で初演された。

その後も創作活動は衰えず、2010年に完成させた弦楽四重奏曲第2番は2011年の英国作曲家賞の室内楽部門を授賞。また、作曲家としての活動の一方、文筆活動でも知られ、シェーンベルクやブリッジに関する著作の他、「デイリー・テレグラフ」や「インデペンデント」などの日刊紙での音楽批評でも知られている。

写真:composers edition


    もっと詳しく ▷


関連記事

  1. ローマ発 〓 ローマ歌劇場は14日に再開場、続いて野外公演

  2. ロンドン発 〓 オペラ・ホーランド・パークが2022年の公演ラインナップを発表

  3. パリ発 〓 パリ国立オペラが2023/2024シーズンの公演ラインナップを発表

  4. ゲイツヘッド発 〓 ノリントンが王立ノーザン・シンフォニアを指揮して引退コンサート、ライブ・ストリーミングも

  5. ベルリン発 〓 ベルリン・フィルのメンバーに初のトルコ人

  6. ベルリン発 〓 ウクライナのオデッサ・フィルがベルリン音楽祭に出演

  7. トロント発 〓 グスターボ・ヒメノが音楽監督を務めるトロント響との契約を延長

  8. ロンドン発 〓 ロイヤル・オペラの首席客演指揮者にスペランツァ・スカップッチ

  9. オスロ発 〓 ノルウェー放送管の次期首席指揮者にペトル・ポペルカ

  10. ニューヨーク発 〓 メトロポリタン歌劇場が“Nightly Met Opera Streams”の第8週のラインナップを発表

  11. ブザンソン発 〓 国際指揮者コンクールで沖澤のどかが優勝

  12. 東京発 〓 クラシック音楽の専門誌「レコード芸術」が7月号で休刊、70年超の歴史に幕

  13. ストックホルム発 〓 スウェーデン王立オペラが演奏会形式の《トスカ》を収録、ストリーミング

  14. ベルリン発 〓 ペトレンコとベルリン・フィルもウクライナへの連帯を表明

  15. ワルシャワ発 〓 アントニ・ヴィトの80歳の誕生日コンサートに気候活動家が乱入

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。